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8/20羊文学ワンマン「"わたしたち"へ」勝手にライブ寄稿

「本当にすいません…!」

17時50分,代官山.
待ち合わせ時刻より20分ほど遅れてやってきた高校時代の後輩と久しぶりの再会.忙しいスケジュールを組んでいて慌てたのかチケットを忘れたという彼女はツイッターやインスタグラムでは近況を見ていたけれど,やはり本人に会った時の久しぶり感は格別だった.
まさか高校の後輩,厳密に言ったら中高一貫校の後輩だから3個離れてて本来ならばすれ違い学年であるところを,少人数が売りだった部活でアットホームな関係であった私たちが一緒にライブを見に行くだなんて思ってもみなかった.
嬉しい誤算とでも言いたいくらいだ.

こんなことを言うのもなんだがハコは2年くらい遠ざかっていた.高校でヴィジュアル系にハマりスラメタ,デスメタ,ハードコア系のディスクユニオンへ帰り道に友人と二人でセーラー服を着たままCDを漁っていたような奴が,である.
ちなみに大学で軽音サークルに入りやっとJロックや邦楽,洋楽と聴き始めた.ヴィジュアル系のライブにも行っていたし本命盤(一番好きなバンドのこと)の最前でベーシストの股間を押し付けられるほどの距離感を体験したこともあるほどのハコ狂い.それがまあ,後々卒業制作前にパニック障害を引き起こし鬱を併発,大学院も1年休学して今はようやくの修士2年.学部時代の後輩すらもう社会人で,今は2年下の後輩が同期である.逆に考えたら同期が多いことがメリットだろうか.
話は大分それてしまったが,年明けに新宿ナイスパで開催されたサークルのOB主催のライブに行って,これならハコにまた行けるようになるかもしれないと思い,念願のハコ復活へ.

代官山UNIT.
駅から約2分の大体500キャパくらいのハコで,整番はゾロ目の222.なんと一緒に行った後輩ちゃんの知り合いの知り合いなんだと.でも初期メンバーはギターボーカルのモエカちゃんだけなんだと.受験で1年の活休や色々で5人組バンドは今やスリーピースバンド.
これほどのキャパで,真ん中あたりだと弊害なのは男性だ.と言っては失礼なのだが私自身呪いたい身長の関係で大体真ん中あたりにいても見えないのがデフォである.だから今まで行ってきたところは整番重視のヴィジュアル系バンドのライブ(運動会)以外はほぼほぼ一番後ろの壁に凭れてタバコでも吸いながら眺めていたのだ.どんどんと入場してくるオーディエンスに少し緊張するのは,人混み慣れをまだ克服していないからである.おそらく.それでもそこそこ見れそう,と思っていたところ,開始5分前辺りでまさかの前列に男性一人侵入.
ああ…見れそうやったんになあ….とか思ったりもしたけど仕方ないや.

SEはThe XX.洒落てるもんだ
セトリは飛ばそう.今回のワンマンのテーマは「手紙」.モエカちゃん(Vo/Gt)は手紙を書く人.ゆりかちゃん(Ba)は手紙を届ける人.そしてフクダさん(Dr)はなんと,手紙.昨日のライブでは最後まで「手紙くん」でした.

エンディングから始まって,少し夏を感じさせるセトリ.久しぶりのハコで酔いしれる.轟音.生声.キックの効いたバスドラ.透き通るベース.モエカちゃんの声が好きだ.芯があるのにハスキーで透明で,一言では言えないけれどやはり透明なチューブだろうか.中身にノイズやハスキーさを入れられるのに外身はコーティングされたようなつるりとした芯のある透き通りそうで透き通らない強い声.
ああ,モエカちゃんが見えない.ゆりかちゃんと手紙くんは見えるのに.でも三人で向かい合ってからイントロでギターを振り下ろすモエカちゃんが見れた時はトキめいた.セミロングのギター女子の最高にカッコいいとこ.髪の毛を顔に貼りつけながら,直しもせずに少し乱れたまま透明なハスキーボイスを吐き出すモエカちゃんが最高にカッコいい時間だった.
久しぶりのハコ酔い.途中から頭痛と眩暈はしてた.目はイってたかもしれない.それでもその声に縋り付きたくて,その音に埋もれていたくて,その世界に沈み込みたくて,体を揺らしていた.

ライブは映画のような一種の大衆型メディアである気がする.そこにスクリーンがあるかないか,録画されているかいないか,くらいの違いであって提供されるエンターテインメント,作品,それを指定席のない会場で何人もの人と同時に堪能し,酔いしれ,その世界へ浸かる.ライブが終わると夢が醒めたような気分になる.それは映画館で映画が終わった後に感じるソレと似ている.
よくエンターテインメントに非日常を求めたりもするが,ソレは夢にも似ているため理屈は合っていると思う.まあ,大体人間なんてそんなもんだと思う.これをただの娯楽と捉えるのか趣味と捉えるのか,それとも生きがいにするかは個人の自由だ.

ともかくだ.
お盆休み明けの月曜日の夜の代官山の地下はまだ夏だった.ステージ側の青いライトとオーディエンス側に時々向けられるオレンジ色のライトを浴びて夕焼けの海岸を連想した.まだ夏は終わっていない.
私の少し斜め前にいた勤務後であろうサラリーマンが気持ちいいくらいノッて体を揺らし,拍手をし,その行動が最高に見ていて気持ちよかった.
勤務後なら疲れたと言ってすぐに家に帰るだろうサラリーマンが平日の夜に好きなバンドの音楽を聞いてこんなにも楽しんでいる.最高じゃないか.音源だけで満足できるものじゃない.臨場感,生の彼ら,声,音,ああ,楽しいんだろうなって見ていて伝わってくる感じ.

それにしても若い.
これからが楽しみだ.久しぶりのハコで私が体力落ちて帰って爆睡したのだけれど,今朝研究室で昨日のセトリを見ながらプレイリストを作った.アンコールでカヴァーしてくれたスーパーカーのも入れて.まさかそこでスーパーカーが聴けるとも思わなかったけれど.
昨日の余韻を引きずりながら,これだけは何かに書いておきたいと思った.
ただそれだけの,ようやくハコに復帰し始めた大学院生のぼやき.


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