自作短編小説 向日葵のように
ここに、幸せな家庭がありました
庭でお母さんが向日葵のお手入れをしています
縁側に座っているお父さんと一緒に
お母さんの後ろ姿を見ながら
娘は言いました。
ねぇ、パパ、どうして向日葵は
スクスクと大きくまっすぐに咲くの?
それはね、朧みたいな元気な可愛い子がスクスク育つと同じように、向日葵も、お母さんのような、暖かく、やさしい太陽と、お父さんのように厳しくても、優しい二人がいるから向日葵や朧は育つんだよ?
え〜〜〜っ!
パパ、変なの!
お母さんのやさしい太陽はわかるけど
雨は冷たいだけでしょ?
んふふっ(笑) おもしろ〜い
それから1ヶ月が経ち……
夏が終わりかけた頃
そんな暖かい幸せな日々を過ごす
幸せな家族に、突然……
悲しいお知らせが飛び込んできました
急にお母さんの電話が鳴りました
リリリリリリ〜〜ン📱
リリリリリリ〜〜ン📱
はい、もしもし…
務めている職場からの電話でした。
電話の内容はお父さんが急に倒れたという連絡でした。
話しているうちに、さっきまで明るかったお母さんの顔が急に暗くなり、沈黙が続き、電話を切ると、お母さんはその場で泣き崩れてしまいました
そのお母さんの姿を見て不思議に思った娘は言いました
ママ、どうしたの?
朧、お父さん、お父さんがね
泣きながら言うのを辞めて涙目になりながらも、顔をキリッとさせて朧に言いました
いまから支度するからすぐに準備して
娘はよく分からないまま、自分なりに急いで支度すると、お母さんは玄関で娘を強く抱きかかえると、急いで病院へ向かいました。
病院に着き、看護師さんに案内されたところは、すこし薄暗く、ひんやりした部屋で、そこにはベットの上で顔にシーツを被せてたまま、横たわって眠っているお父さんが居ました。
死因は心臓発作でした。
ねぇ、ママ
パパはどうしたの?
なんでネンネしてるの?
お母さんは泣きながら言いました。
パパはね。今まで頑張りすぎたから
疲れて眠ってしまったのよ
さあ、お父さんにお別れして
娘はまだ小さいので
お父さんに何があって
どうして眠っているのかわかりませんでした
そして娘はお母さんと一緒にお別れのあいさつしました。
病院から出るとき、娘はお母さんに言いました
パパ、早く良くなって帰ってくるといいね
朧ね、さっきね、こっそり
パパを早く治してねって
お医者さんにお願いしたから!
すぐに元気になるよねっ
二人はそう言いながら家に帰りました
それからというもの、お母さんは落ち込んでいるのか、暇があると縁側でぼ〜っとする日々が多くなりました。
その為、お母さんは向日葵のお手入れをあまりしなくなりました。
娘は少し元気のない向日葵を見て、娘なりに、お母さんがやっていた事を見様見真似で手入れをしていました。
最後にお水をあげていると
お母さんは娘に聞きます
ねぇ、朧、
向日葵にお水をあげてて楽しい?
すると朧は言います。
うん、たのしいよ
だってパパが言ってたもん
太陽のように全てを暖かく包み込んでくれるお母さんと、雨のように辛く悲しい事を優しく洗い流してくれるお父さん。二人がいるから向日葵や朧は育つんだよ?って!
今日は雨降ってないからお花さんが元気ないでしょ?だから朧がお水をあげてるのっ
ママも元気無いからお水がほしかった?
お母さんに、そう言った朧を強く抱きしめて泣いていました。
そうだね、この向日葵のように
上に向かって大きく育てようね
ママも頑張るから、また来年、
パパとママの朧のように
明るい元気な向日葵を一緒に育てようね
娘は笑顔で元気よく、うんっ!
と返事をしました。
それから大きくになった私は
全てを知り、やっとお父さんの言っている意味がやっと解りました
太陽だけでも、お水だけでも向日葵は枯れてしまう。けれど
向日葵は太陽と雨やお水でスクスクと育ち、太陽の光を浴びた向日葵は、
その方向に向いて育つ花だよって!
今でもそんなお父さんの優しい会話をしたのを覚えています。
だからお空に居るお父さんへ…
雨の日はお父さんがいるみたいで
私は雨の日が好きです
いつも、お空から優しいお水をありがとう
そしてお母さんが時々、厳しいように、暑く、つらい時もあるけれど、いつも優しく暖かい光で包んでくれる太陽か好き
そして、そんなお母さんの背中を見て、隣に居て、いろいろできるようになりました。ありがとう、お母さん
そんな二人に大切に育てられた私は今、二人の子宝に恵まれました。
お父さん、私はちゃんと、お父さんやお母さんみたいに向日葵のようにまっすぐな子供に育てて行けてますか?
これからはお母さんにお父さんの分も恩返しをしていきたいと思います。
だから、お空から私達を見守っていてくださいね。
お父さん、私ね、
この向日葵がだぁ〜〜い好きぃ❤
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