題:GTEC試験官
GTEC──Global Test of English Communication
これは、英語4技能検定で、私が先週の土曜日に学校に駆り出されてまで受けたテストです。そのときの先生が面白かったので、ネタにしました。
今回の話は、生徒ではなく先生(試験官)視点です。
「先生、大丈夫ですか?」
二日酔いだ。
職務怠慢というわけではない。
ただ、前日──いや今日の夜中の2時まで酒を飲んでいたのが原因なのだ。
「そんなしかめっ面して、昨日何か悪いことでもあったんですか?」
目の前の生徒に話しかけられる。
清々しい顔でやり切った感を出している。なにかと生意気そうな男子生徒である。
私を気遣う様子はこれっぽっちも見当たらず、
嬉々としてこちらを窺い、机にバックを載せて帰宅の準備を始めていた。
「二日酔いよ、二日酔い。昨日、体育教師の先生たちで集まって深夜まで呑んでたのよ。まじで頭痛いわ」
「え、つまりは昨日、平日なのに飲んでたってことですか?」
「平日と言っても昨日は金曜でしょ。今日のGTECの監視のために、朝苦労して起きたのよ、私」
へえ、だからですか、と目の前の男子生徒は言った。
彼は教科書や参考書類を自分のバックに詰めている。
今受け終わったばかりの分厚いGTECの問題用紙もそのなかに入れた。
そう、これは生徒たちがGTECを既に受け終わった後の話である。
私はこめかみを抑えながら、教室内を見渡した。
GTECが終わり、開放感に浸るもの、さっさと帰って寝たいと言うもの、部活に向かうもの、弁当を食べ始めるもの。
行動は生徒それぞれだった。
ただ一つ共通して言えるのがその顔。憂鬱そうなものは誰一人としていなかった。私以外。
一応は進学校であるこの高校。
私は体育教師として生きているので、英語などは通じない。
GTECのテスト中の生徒監視のためだけに駆り出された休日であり、今生徒に尋ねられたよう、二日酔いで体も重く、頭部には疼痛が走っていた。
早く帰って横になりたい。
────ああ、ズキズキする。これ、寝ないと治らないやつだわ。
他の女子生徒が今度は尋ねてきた。
「先生、絶対昨日酒飲んだでしょ!」
陽気な女子生徒だ。
「そうよ、、、。深夜2時まで」
「えー、やばー!絶対、今気分悪いじゃん」
「うん、気分最悪。ほんとは今日試験監督なんてしたくなかったのよ」
このクラスの担任は出張で、今日は副担である私が代わりに駆り出された。
「先生、若いしね!上には逆らえないってことだし、教師の闇が垣間見えちゃってるじゃん!」
「まあ、別にちゃんとお金がもらえるからいいんだけどね、、、」
先生という職業も楽ではない。私のような体育を専門とする先生であってもだ。
「それより、先生って英語話せないんですか?」
「あー、無理」
こんな私より知能指数が低そうな子でも、英語をペラペラに話し出す。
進学校は恐ろしいところだ。
だって、次のようなことを言うのだから。
「“ Control your alcohol, don’t let it control you.”(酒に飲んでも飲まれるな)だよ!先生!」
その流暢で鋭利な言葉に私は少し、むっとしたが、意味は分からなかった。
酒を呑むな。そう言われて自制する気はおきないが。
多分そんなとこだろう、と。
「ちょうどそんな問題が出てたの!」
だが。
その言葉に反応してしまった。
英語は長らく意識的に見ていないし、聞いていない。
でも。
「あら?ほんとに?」
「うん。なんだか先生のこと言ってるみたいな文章書かれてるよ!」
「はは、問題制作者から私への当てつけかしら。──ちょっと、問題見せてくれない?」
久しぶりに酒以外に興味が湧いた私だった。
モデルは、私のクラスの副担である体育教師の先生です。
生徒目線で立ってくれて、とても頼りになる先生なのですが、私生活が本当に心配です。というか二日酔いで学校にくるな!(笑)
以上、GTECの日の半分ノンフィクション短編でした。
次回もお楽しみに〜〜!!
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