寝れない夜のカップラーメン

正体の無い漠然とした不安、過去の失敗への後悔、突然襲ってくる自己嫌悪。そんな感情に飲まれ、眠れない夜がある。

残念ながらこれらは簡単に切って捨てられるものでなく、同時に捨てるべきものでもない。

その傷はどれほど醜くとも自分の一部であり、その感情も愛でるべき己なのだ。過去の後悔も未来への不安も、それをそのままで割り切り愛でられる日がきっとくる。少なくとも火中でそう思っておくことは一時しのぎであれ救いになるであろう。

眠れない夜は生理的欲求をサッサと満たし、浅かろうと寝てしまうに限る。腹を満たせば人間眠くなるのは真理である。

深夜飯だ。短時間で作って食えるものが良い。そして出来れば暖かなもの。気の利いたスープと腹持ちする何かが……

そう　カップ麺である。

カロリー？不健康？なに、常習化しなければ大したことはない。若いうちなんぞ、多少の不養生も数日で取り戻せる。

なにより、深夜に食うカップ麺はどんな時でも最高に美味いのだ。

コンロとやかんでもケトルでも、とにかく熱いお湯を用意して注ぐだけ。カップ麺は日本の世界に誇る発明品だ。不健康だどうだという人も多いが、それ以上に恩恵を受けている若者は多かろう。

お湯を注いだ後、じっと3分待つ。好きな音楽を聴いても良いし、夜風に当たりながら町の灯を眺めても良い。明日への不安や昨日の後悔も、鼻孔をくすぐる良い香りと深夜の空腹を前にしては霞むだろう。今だけは、この3分だけは、このちょっとした背徳に思いを寄せても罰は当たるまい。

3分待って蓋を開ければ、暖かな湯気と良い香りが部屋が嗅覚を襲う。腹に溜まる麺と、塩の効いた暖かなスープ。いささかジャンクだが、旨味の強い肉。この単純な要素は驚くほど簡単にちょっとした幸福感をもたらしてくれるだろう。

食い終わったら後かたずけもほどほどに、出すもの出して寝てしまえばいい。布団に横になって、スープの香りに思いを寄せながらゆっくりと呼吸をすれば何れ瞼は落ちてくる。

なに、そんな日がたまにはあっても良いのだ。