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理科室まがった(亜美編)(#毎週ショートショート)

「理科室まがったとこで待ってるね」
「わかった、クラスルーム終わったらいくね」
由美といつも通りのやりとり。クラスは違うけど小4から5年間の親友。
放課後、理科室まがったところにある屋上につながる階段でドラマとか推しのアイドルの話とか進路とか将来の夢とか他愛のない話をする。ほぼ毎日の日課だ。

ただ、あの日だけは違った。
男子のくだらない揉め事でクラスルームが1時間伸びた。
「もう、いい加減にしてほしいよ」
急いで理科室まがったとこに向かったが、久美はいなかった。
(由美ならクラスルーム伸びたことわかってくれてるでしょ、仕方ないよ)

でも、2度と久美と話をすることはできなくなった。
その日の帰り道、久美はトラックと乗用車の事故に巻き込まれて亡くなった。

それから、私は勉強を頑張り、夢だった中学校の先生になった。
今の学校にも理科室まがったとこに屋上につながる階段がある。
毎日、放課後には行ってみるよ、由美が待っていないか確かめに。

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