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【読書日記】2/24 忠義の猫たち。「猫姫おなつ(五人女捕物くらべ)/平岩弓枝」

五人女捕物くらべ(上下)
 平岩弓枝 著 講談社


 勝手に猫本ウィーク5日目。今週は時代小説多めになってしまいました。

 岡っ引き小平治と居候の謎の若侍本多忠吉郎とともに、弱い立場の人に寄り添い事件に立ち向かう五人の女たち。
釣り好きの売れっ妓芸者「太公望のおせん」、琉球渡りの高級品を扱う大店の女主人「琉球屋おまん」、早変わりが得意な女役者「七化けおさん」、可憐な尼僧「花和尚お七」そして、猫使い「猫姫おなつ」。

 上巻、下巻それぞれ彼女たちが順繰りに登場して、捕物帳ではありますが、謎解きよりも5人の女性の個性を楽しむお話かと。
 特に異彩を放つのが「猫姫おなつ」。

上巻の「猫姫おなつ」の章は、尾張家の奥方(将軍家斉の長女、御年13歳)が可愛がっている猫おたま様が大奥から消えた事件。
猫一匹とはいえ、お家騒動にもつながりかねないので関係者は青くなり、相談をもちかけられた本多忠吉郎は、猫のことなら目黒村の猫姫に、と助勢を頼みにいきます。
 目黒村の将軍の鷹狩に供する猟犬の訓練をする仕事を請け負う四季家、その家の女たちは猫の訓練を行い蔵米を鼠の害から守る役目を負っていて、その惣領がおなつなのです。
 おなつは、配下の猫たちを自在に使役しておたま様を隠していた黒幕を暴きます。
 
黒猫の双子・ぬば玉とやみよ、全身が灰色で短毛すらりとひきしまった灰かぶり、緑の目の白猫みどり丸、片耳がちぎれた耳なし。
クライマックスは、彼らの活劇です。時代劇の45分くらいで派手な殺陣が繰り広げられる感じでしょうか。

 お徳のまわりから猫が庭へ跳んだ。
 同時に、おなつの傍から、やみよ、ぬば玉、灰かぶりが出る。
 広い草原が猫の戦場になった。
 吠え、唸り、噛み、ひっかく。
 しかし、猫姫軍団の戦いぶりは見事であった。
 ぬば玉、やみよ、灰かぶり、みどり丸、耳なしの五匹が相手の猫を取り囲むようにして縦横に走り廻ると、一度に三匹、五匹と地上にひっくり返る猫の数が増えていく。中には闘わずして逃げる猫も続出して、たった四半刻の中に勝敗は決してしまった。

五人女捕物くらべ「猫姫おなつ」より 平岩弓枝 著

 恰好良いですね。
 そして、下巻の「まんだらげ」の章では、鼠を操る妖比丘尼との術合戦となるのですが、金目銀目の隠居猫おしろの覚悟に目頭が熱くなりました。

 何となく、こういう役目は「犬」の独壇場であるように思っていたので、猫だと新鮮な味わいがありますね。