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【読書日記】1/30 多様性のはじまりは、とびきりのかわいらしさ。『はじまりは、まっしろな紙/キョウ・マクレア』

はじまりは、まっしろな紙
 日系アメリカ人絵本作家ギョウ・フジカワがえがいた願い
キョウ・マクレア (文),ジュリー・モースタッド (絵),八木 恭子 (訳)
 フレーベル館

 昨今、D&I(Diversity&Inclusion)という目標を掲げない組織は無いといっても良いかもしれません。
 人種、性別、年齢、障害など多様性のある人々が、尊重され能力を発揮できるような組織にしましょう、という理念には私も賛成ですが、あんまりお題目のように唱えられると天邪鬼が顔を出します。
 手っ取り早く少数派の中から多数派に合わせられる(例:女性だけれど、『男性並み』に働くことが可能な人)都合の良い人をピックアップして数合わせしているなんちゃってD&Iでは意味がないのよ、と悪態をつきたくなるのです。

 さて、本書は、絵本の中で画期的な取り組みを行った一人の日系人女性の物語。
 1960年代のアメリカ、肌の色の違う赤ちゃんをはじめていっしょに登場させたのです。
 ギョウ・フジカワ。1908年にカリフォルニアで日本からの移民の両親のもとに生まれます。画才を活かしてディズニースタジオなどで働きますが、戦争中、家族は収容所に入れられるなど人種差別の現状も目の当たりにします。
 戦後、まだ、人種差別の残る中、出版社に反対されながらも白人だけでなくアフリカ系、アジア系の子供たちを登場させたBabies(本記事の見出しの写真。右側)を出版するのです。

 今の絵本では当たり前のように、様々なルーツを持つ子供たちが描かれていますが、それが当たり前でない時代があり、その壁を打ち破る初めの一歩が、このかわいらしい絵本であることがうれしい驚きです。
 ぷっくぷくのほっぺ、おしり、愛らしい仕草。
 どんな顔かたちでも赤ちゃんは、みんな可愛い(手に負えないところもみんな一緒)。
 多様性、を声高に叫ばなくともこの光景を見れば自ずと理解できるように思います。
 かわいらしさに天邪鬼が引っ込んで、ギョウのように粘り強く、自分のできることで道を切り開いていこう、と思えてきます。

 ちなみに、私の母は、この絵本の赤ちゃんたちをみて、「まあ、おむつを安全ピンでとめてる、なつかしい。」と言いました。

Babies Gyo Fujikawa 左の赤ちゃんのおむつに注目

 私はそんなこと気付きもしませんでした。 事程左様に人の視点は多様性に富んでいる。。。