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【私の100冊】NO2 仲間と楽しむ読書。「銀河英雄伝説」の思い出

私のプロフィールとして、「私をつくってきた100冊」を選びました。
その中から順不同で本の内容、魅力、思い出などご紹介しております。

私の100冊
 33.銀河英雄伝説 田中芳樹

「私をつくってきた100冊」にあげた本の中で、唯一、今までに読んだのが1回だけ、というのがこの銀河英雄伝説(以下、「銀英伝」)です。
一回だけしか読んだことないのに数々の愛読書を差し置いて選んだのか、それほど面白いのか、と言われると、さあ、どうだろう、と疑問が残ります。

なんだそれは?と思われるでしょうが、「銀英伝」はじめ田中芳樹作品は「仲間と楽しむ読書」の面白さを教えてくれたという意味で大切な作品なのです。

銀河系に一大王朝を築きあげた帝国と、民主主義を掲げる自由惑星同盟が繰り広げる飽くなき闘争のなか、若き帝国の将“常勝の天才”ラインハルト・フォン・ローエングラムと、同盟が誇る不世出の軍略家“不敗の魔術師”ヤン・ウェンリーは相まみえた。この2人の智将の邂逅が、のちに銀河系の命運を大きく揺るがすことになる。

創元社商品紹介より

要は、帝国軍VS同盟軍の戦いを軸に、様々な組織の様々な人々の思惑が絡み合う銀河大河ドラマです。

これを読んだのは、昭和が平成に代わった直後の中学三年生。
友人たちと回し読みをしていて、みんなを虜にした作品でした。

何が私たち中学生をそんなにも夢中にさせたか。
それは「キャラクター」でした。
帝国軍、同盟軍それぞれに所属する登場人物たちが強烈な個性の持ち主で、また「蒼氷色の瞳の天才」とか「不敗の魔術師」などの二つ名も魅力的でした。

友人たちと、帝国軍派か同盟軍派か、誰が好きか(今でいうと推し?)という疑似恋話にうつつをぬかし、「友人なら誰それ、恋人なら誰それ、結婚するなら誰それ」などと妄想を垂れ流し、キャラクターそれぞれの名台詞を言い合って盛り上がりました。

もちろん、小説の面白さあってこその人気です。
「主人公側とその敵」という単純な構図ではなくそれぞれの陣営にそれぞれの事情があり、また、それぞれの陣営の中にも正邪善悪様々な人がいるという、どちらが正義とも言い切れない構成が中学生にとっては新鮮でした。

ただ、宇宙海戦の描写など、世界史の戦略史・戦術史に興味があれば、より楽しめたと思いますが、私はそれについては食指が動かず、また舞台は戦時中で主要な人物は概ね軍関係者ですから戦死が相次ぐので胸が痛み、一度通して読んだら、再び読み返したいとまでは思いませんでした。

例外的に手元に持っていて何度も読んだのは外伝2巻「ユリアンのイゼルローン日記」です。
同盟軍の若き将軍、ヤン・ウェンリーの養子となった少年ユリアンが任務地の最前線イゼルローン要塞に赴任したときに綴った日記で、個性あふれる同盟軍の面々の日常生活が活き活きと綴られているので好きなのです。
ヤン・ウェンリーの副官、才色兼備のフレデリカ・グリーンヒル(私のお気に入り)も沢山登場するのも良いところです。

なお、今は、結婚した時に夫が全巻持ってきたので本編もうちに揃ってます。
数年前、普段あまり本を読まないかめくんに勧めてみたら、ひょいひょいと読んでいたのでやはり面白いのでしょう。

夫も同世代なので中高生の頃に親しんでいたらしい

さて、「銀英伝」は、外伝2巻以外は一回しか読んでいないのですが、私が学生の頃(平成一桁代)田中芳樹作品は大人気でして、いずれも友人たちの間で話題となり感想を共有して楽しみました。

私は「銀英伝」よりも、現代日本を舞台に竜童家の4兄弟が竜に変身して大暴れする「創竜伝」や、古代ペルシャを舞台にしたファンタジー色の強い「アルスラーン戦記」の方が好きでより夢中になりました。

天野喜孝さんの挿画も人気の一要素でした

では、なぜ、このどちらかを100冊にあげなかったのか。
それは、最後まで読んでいないから、です。
どちらも私が十代の頃発表され、段々間遠になりながらも巻を重ねていたのですが・・・物語の途中で停止しその後数十年。
比較的最近、完結したと聞きました。
しかし、もはや完結編を手に取る気も起きず、私の中で未完のままです。
さすがに全部読んでない本をあげるのもはばかられ、また、友人と盛り上がった度合としては一番だった「銀英伝」を100冊の中に入れることにしました。

本にも読み時、というものがあります。
「銀英伝」も、もし、今、初めて読んだとして、あの頃のように楽しめるかというと難しいかもしれません。
薔薇の騎士ローゼンリッター」とか「金銀妖瞳ヘテロクロミア」とか中二病(その頃はそんな便利な言い回しはなかったけれど)心をくすぐるような言葉に友人たちとともにざわめくことのできたあの頃だったからこその読書体験だったと思います。

あの年齢で、あの仲間たちとともに出会うことが出来て良かった、そう思える本なのです。

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