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【読書日記】6/18 父の日に想いだす本など「父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」他

父の日ですね。
子供とポテトサラダをこしらえて、贈り物のハンカチーフと一緒に父に渡しに行きました。ポテトサラダは、下の子でも作れる&見栄えよく整えられる(大皿にデコレーションケーキ風にしたりうず高くしてクリスマスツリーっぽく飾ったり)&高齢の両親にも食べやすい、ので、我が家では行事の際に重宝しています。

さて、本日の読書タイムでは、父と子、でぱっと頭に浮かぶものをつらつらと拾い上げてみます。
 作家としては向田邦子さんや幸田文さん、森茉莉さん、阿川佐和子さん。
 今読んでいる「応為坦坦禄/山本昌代」は葛飾北斎とその娘、応為の物語。
 モンゴメリの「丘の家のジェーン」は、存在も知らされていなかった父から誘われて、12歳の少女ジェーンが父やプリンスエドワード島の人々と暮らす日々の中で成長する物語。
 一般的に父と息子は関係が難しいといわれますが、池波正太郎の「剣客商売」の秋山小兵衛と大治郎は、お互いに程よい関係を保っているのが魅力的。
 対照的に息子による「父なるもの」殺しをモチーフとするカラマーゾフ。

そして今日は「父が娘に語る楽しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」を。

元ギリシャの財務大臣である著者、ヤニス・バルファキス氏が娘のクセニアさんに「パパ、どうして世の中にはこんなに格差があるの?人間ってばかなの?」と問われたことへの答として書いた本です。
だから、とても分かりやすいし考えさせられます。
もし、タイトルで手に取るのを躊躇した男子がいたら、もったいないので、ぜひ読んでほしいなあ~と思います。高校生の必読書にしたいくらいです。

経済のことって難しいから面倒くさい、もしくは、自分は金儲けしたいわけじゃないから関係ない、と思っている人にこそ読んで欲しい。

バルファキスさんは言います。

誰もが経済についてしっかりと意見を言えることこそ、良い社会の必須条件であり、真の民主主義の前提条件だ。
景気の波は私たちの生活を左右する。市場の力が民主主義を脅かすこともある。経済が私たちの魂の奥に入り込み、夢と希望を生み出してくれることもある。専門家に経済をゆだねることは自分にとって大切な判断をすべて他人にまかせてしまうことにほかならない。

父が娘に語る美しく、深く、壮大でとんでもなくわかりやすい経済の話

私たちは、好むと好まざるとかかわらず、経済社会で生きています。海や川で舟に乗っていて、水の流れや風のことを知らなければただ流されるだけですが、その川のこと、地形のこと、気候のことなどを知れば、ある程度舟を制御して自分の望むところに行くことができる、そういうことだと思っています。
また、人の暮らしは経済活動そのものです。自分が、物を作る、買う、働くなどの活動が他者に影響を与えて社会へと広がっていく。風が吹けば桶屋が儲かる、ではないですが、視野を広く持ち、その過程や影響を考えることができるようになるかどうかで、自分と社会とのつながりかたが違ってくると思うのです。

本書の内容についてまとめるのは至難の業なので、その努力を放棄して下に目次をつけておきました。

私は、バルファキスさんが娘さんに「クセニア」という名をつけた謂れに感銘を受けました。
クセニア、とはギリシャ語の「クセノス」、他人とか異邦人という意味だそうです。
自分の娘にそんな名前をつけるなんて、と私の感覚では驚いたのですが、「国家や社会は、よそ者の目で見る方がその本当の姿がよくわかる」という信念によるものだそうです。

「世界のありのままの姿をはっきりと見るために、精神的にはるか遠くの場所まで旅をしてほしい。それによって、君は自由を得る機会を手に入れる
 大人になって社会に出ても精神を解放し続けるには、自立した考えを持つことが欠かせない。経済の仕組みを知ることと、次の難しい問いに答える能力が、精神の自由の源泉になる。
その問いとは、「自分の身の回りで、そしてはるか遠い世界で、誰が誰に何をしているのか?」というものだ

父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話

父の教え、として心に刻みたいものです。

「父が娘に語る楽しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」目次
 第一章のみ詳しく副題を。それ以下は章のタイトルのみ記載します

プロローグ 経済学の解説書とは正反対の経済の本

第1章 なぜ、こんなに「格差」があるのか?――答えは1万年以上前にさかのぼる
・なぜ、アボリジニがイギリスを侵略しなかったのか?
・かつて市場はあっても経済はなかった
・「言語」と「余剰」の二度の大きな飛躍~このとき経済が生れた
・文字~それは余剰を記録するものだった
・債務、通貨、国家 仮想通貨は一万年以上前から存在している
・官僚、軍隊、宗教~支配者が支配し続けるために必要なもの
・テクノロジーと生物兵器 先住民を一瞬で殺したもの
・では、最初の質問に戻ろう なぜアボリジニがイギリスを侵略しなかったのか
・なぜ、アフリカから強国が出てこなかったのか?
・地域内格差――金持ちは100万ドルを簡単に稼げる
・「当たり前」に疑問を持ち続ける 格差はどこからはじまった?

第2章 市場社会の誕生――いくらで売れるか、それがすべて

第3章 「利益」と「借金」のウエディングマーチ――すべての富が借金から生まれる世界

第4章 「金融」の黒魔術――こうしてお金は生まれては消える

第5章 世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界――悪魔が潜むふたつの市場

第6章 恐るべき「機械」の呪い――自動化するほど苦しくなる矛盾

第7章 誰にも管理されない「新しいお金」――収容所のタバコとビットコインのファンタジー

第8章 人は地球の「ウイルス」か?――宿主を破壊する市場のシステム

エピローグ 進む方向を見つける「思考実験」