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【読書日記R6】 6/2 狐とカササギにきいてみよう。Audibleってどうですか?

いつのまにか今年も折り返しの月、紫陽花しっとり美しい六月でございます。
なんだか色々と人生の積み残しが多くなって焦ります。

さて、大型連休明けから、Audibleを使い始めました。


Audibleとは?

Audible(オーディブル)とは?
Audibleは、プロのナレーターが朗読した本をアプリで聴けるサービスです。移動中や作業中など、いつでもどこでも読書ができ、オフライン再生も可能です。

Audibleサイトより紹介文

今まで、あまりオーディオブックは利用したことがなかったのですが、とある理由(後述)で導入してみることにしたのです。

まだ無料お試し期間中ですが、二作品を聴いたところなので、感想をまとめてみました。

<聴いた作品:2作品3冊分>

「この本を盗む者は」 著者: 深緑 野分 ナレーター: 矢野 亜沙美
再生時間: 11 時間 53 分

「カササギ殺人事件 上・下」
著者: アンソニー・ホロヴィッツ, 山田 蘭 (翻訳)
ナレーター: 佐々木 望, 山口 由里子
再生時間: (上)11 時間 37 分 (下)13時間5分

1.この本を盗むものは

高校生の深冬は、本の街・読長町に住み、その象徴的存在である巨大な書庫「御倉館」を築いた一族の娘であるにもかかわらず「本が嫌い」。

「御倉館」の管理人の父のけがのため、やむを得ず手伝いをしているが、ある日、御倉館から蔵書が盗まれた。
“この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる”
謎のメッセージとともに、盗人除けの本の呪い(ブックカース)が発動。
読長町は町の人々ごと「繁茂村の兄弟」というファンタジー物語の世界に姿を変えてしまった。

元に戻すためには泥棒を捕まえることと知った深冬は、どこからともなく表れた犬耳少女「真白」とともに物語の世界を駆け巡る。

なぜか、本盗人はキツネに変化していて、町の人たちも自分も時間がたつとキツネの姿へと変身していく。
キツネになりきる前になんとか泥棒を捕まえて一件落着、と思いきや、その後も「この本を盗む者は、固ゆで玉子に閉じ込められる」という呪いでにハードボイルドの世界、「この本を盗む者は、幻想と蒸気の靄に包まれる」という呪いでスチームパンクの世界、と、深冬は物語の世界で拳銃に狙われ、謎の生物に襲われしながら、泥棒探しに奮闘することになる。
「私は、本なんて読みたくないのに!御倉館なんて大嫌い!」と叫びながら。

ところが、あるとき、泥棒を捕まえたのに、町がもとにもどらない。
誰もいない町に取り残された深冬。
さあ、どうする???

犬の耳をもつ少女「真白」とは何者?
このブックカースの仕組みをつくったのはだれ?
なぜキツネに変身してしまうのか?
なぜ、深冬は本が嫌いなのか?
御倉家の曽祖父・祖母・父・父の妹で寝てばかりいる叔母のひるねの家族の一代記とは?
などなど、不思議なことばかりですが、深冬と一緒に本の世界で冒険する気分で楽しめます。

「本の中に入ってみたい」「本だらけの町で本のこれでもかとばかりある家で暮らしたい」という本好きなら一度は思う願い、その気持ちをたっぷりと満足させてもらえる物語でした。

2.カササギ殺人事件 上・下

物語は、元・女性編集者スーザンの回想から始まります。

担当した作家、アラン・コンウェイの人気シリーズ最後の作品「カササギ殺人事件」について「これは、人生を変えてしまった本である」と。

この思わせぶりな前振りのあと、おもむろに作中作である「カササギ殺人事件」が始まります。

1955年の英国のとある田舎町、パイ屋敷の家政婦が鍵のかかった屋敷の中で階段から落ちて亡くなっているのが発見された。
掃除機のコードに足をひっかけて転落したことによる事故死とおもわれたが、その数日前に息子と口論しているのを目撃されていた。
村でささやかれる悪意ある噂に悩んだ息子の婚約者は、名探偵アティカス・ピュント(ドイツの収容所を生き延びたという経歴の持ち主)に助けを求めめる。
探偵は自分に出来ることは何もない、と彼女を返したが、新聞でパイ屋敷の当主・サー・マグナス・パイが殺されたことを知り、村へと赴く。

英国の田舎の村の濃密な人間関係、一見何もない社会に潜む悪意や隠し事等々、クリスティを彷彿とさせる「カササギ殺人事件」ですが、なんと、解決編の原稿が欠落していた!

結末のないミステリなんて!と原稿を読んでいた編集者のスーザンは憤然として上司や作家に連絡を取ろうとしますが、なんと作者のアラン・コンウェイは、そのときには自宅の塔から落ちて亡くなっていたのです。

出版社の社長・スーザンの上司であるチャールズ宛てに遺書が届き、彼は病で余命幾ばくも無いことを明かし、自ら死を選ぶことを示唆していました。

それでも原稿がないと困るわ、とスーザンがあちこち探し始めるうちに事態は思わぬ方向に転がり始めます。

アラン・コンウェイの死の真相は?原稿はどこ?カササギ殺人事件の犯人は?
と、入れ子構造になった謎が絡み合い展開する物語の世界を楽しみました。

特にクリスティファン+BBCのポワロのドラマのファンであれば、オマージュ要素が散りばめられているので宝探しのようにも楽しめると思います。

朗読も、現代のスーザンの部分は女性が、作中の「カササギ殺人事件」は男性が朗読していたので切り替えが分かりやすかったです。

以上の2作品。
どちらも本屋大賞にノミネート(「この本を盗むものは」)されていたり、年末ミステリ全制覇(「カササギ殺人事件」)していたり、と話題作ですし、私も、読んでみたいな、と気になっていた作品でした。

私が考えるAudibleの特徴について

1.私が試してみようと思ったそもそもの目的に合致している
仕事柄、県内全域(隣県含む)の移動が多くあり、概ね自車を使っています。片道一時間程度のところが多いのですが、時折片道2時間半というところもあります。

運転の間は、貴重な一人時間なので、道中の景色を眺めて季節の移ろいを感じたり、じっくりゆっくり考え事をしたりして有意義に過ごしています。
ちなみにnoteの記事の原稿もこの間に考えています。

ところが、最近、特に帰り道でとみに眠気がさすようになってきてしまいました。
年齢があがって疲れがたまりやすくなったのが原因だと思うのですが、こまめに休憩をはさんではいるものの、どうにもこうにもらちがあきません。
このままでは取り返しのつかないことを起こしてしまう恐怖で、なんとか眠気防止策を考えている中で、Audibleは効果があるかな、と思ったのです

今まで、車の中ではラジオをつけていました。
ラジオは幅広い分野の、また、その時々に流行っている話題を知ることができて重宝しています。
しかし、山道だと電波が途切れたり、広域を移動していると途中で放送局が変わって周波数の調整が必要になったりで、眠たいのに聴けないということもあるのです。
さらには、眠いときの高尚なクラシック音楽や、疲れているときの「更年期を乗り切るために」などの気の滅入る話題は避けたいな~ということも。

その点、Audibleを車のオーディオシステムにBluetoothでつないで聴いてみたところ、物語、それも自分が興味を持った作品の朗読ですから、多少の眠気は吹き飛んでしまいます。
眠気対策としては、かなり有効であると思います。

2.作品を十分に咀嚼できるか、というと今一つかもしれない
残念ながら、作品の自分への浸透度が浅いようです。

結局、あれはどういうことだったのだろう?と理解が及んでいないところが残ってしまっていますし、登場人物の名前や場面など聞き終わったそばから風化が始まり、自分の中への歩留率が紙の本に比べて悪い気がします。

<理由その1> 自分のペースで朗読は進まない(当たり前)
本を読むときは、さーっと軽く読み流す部分と、じっくりと読みたい場面、時に本を閉じて反芻したり考えたりと、緩急自在です。
しかし、朗読は朗読者のペースでずっと進んでいくので、ふと考えているうちに場面が進んでしまいます。

<理由その2>「ながら聴き」なのでそもそも頭半分で聴いている。
導入の前提が「運転しながら聴くこと」なので当然ですが、周囲の交通状況や道順などに気を配りながら聴いているので聞き逃すところも多くなります

<理由その3>漢字表記が浮かばない。
特に日本の作品では人名や地名の漢字が分からないと、うまくイメージがかたまりません。
また、馴染みのない制度や専門用語も、漢字をみれば何となく理解できるのですが音だけできくと、あれ、いまなんて言ったの?となってしまいます。

3.「朗読」という表現形態をどう捉えるか
オーディオブックは、著者が書いた作品を「朗読」という形で表現しています。

同じ楽譜でも指揮者や楽団によって異なる趣を呈するのと同じで、文字で書かれた作品は朗読者によって「演奏」されているのです。
そのことも含めて楽しんでいますが、自分で直接作品を「読んだ」ら、作品の印象が変わるかもしれません。

今回読んだ作品は2作とも未読でしたが、既読の作品を聴いた場合、朗読者のフィルターがかかった表現をどのように感じるのか、今度試してみたいと思っています。

4.作品は豊富なので、本選びには困らない。
Audibleの説明ページでは約12万冊と紹介されていました。
私の偏見で、オーディオブックは古い作品か自己啓発本が中心と思っていたのですが、先般の本屋大賞の受賞作なども早くも登場していますし、聴きたい本がなくて困るということはなさそうです。

一か月無料視聴期間が終わったら一か月1500円だそうです。
昨今、本のお値段も高騰しているので、本によっては一冊で既にこの金額を超過する場合もあります。
少なくとも2~3作品聞ければ、あまり好きな言葉ではないですが「もとはとれる」と判断しています。

結論

Audibleは、今の私の生活に向いているような気がします。

車通勤なので毎日の往復で少なくとも30分はありますし、その他、家事をしながら聴くのにも適しているようです。

コロナ禍にオンライン会議用に導入したワイヤレスヘッドセットを肩にかけて台所で芋の皮をむいたり玉ねぎ炒めたり、その後お皿を洗ったりしながら朗読を聞くのを楽しんでいます。

世の中には多くの本があります。
読みたいな、と思っても諸般の事情で積読未満になってしまっている本がたくさんあって気が遠くなります。

それらを読む(聴く)機会が増えるのは、嬉しいことだと思っています。

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