【読書日記】5/7 私にとって「水戸黄門」のようなシリーズ。「ペニー・レイン/小路幸也」

ペニー・レイン 東京バンドワゴン
小路幸也 著 集英社

東京下町で古本屋とカフェを営む堀田家に舞い込んでくる謎や事件を知恵とLoveで万事解決していくシリーズ。

第一作目の奥付を確認したら2006年でした。毎年新刊がでておりますので、毎年堀田家の皆様の近況を読みながら、はや15年以上が過ぎました。
本書含めて18作が発表されているのですが、中には過去編があったりスピンオフがあったりなので、作中での時間経過は、古本屋店主の堀田勘一が79歳から89歳で、ちょうど十年たった勘定になります。

明治から続く古本屋東京バンドワゴンの三代目店主である堀田勘一、その妻サチは、既に故人ですが、なぜか幽霊としてとどまり家族を見守り本書の語り手を務めている。

勘一の息子、我南人は、かつて伝説のロッカーと言われ今もその名声は衰えず。いつもふらふらしているが「LOVEだねえ~」とここぞというときに決め台詞。

我南人の子供は三人。
長女・藍子は、画家。おっとりしているようで、未婚の母として娘を生み育ててきた大胆なところも。その後、同じく画家のマードック氏と結婚。
長男・紺は、文筆家。沈着冷静な性格で堀田家の中では地味。
次男・青は、添乗員から俳優までなんでも器用にこなす美男子(母は、日本を代表する女優)

それぞれが結婚し、子どもが生まれ、お店の常連や町の人々などと縁が育まれ・・・
と登場人物がどんどん膨れ上がるので時々このひとだれだったかしら?と思いながらも久々の邂逅を楽しみに読んでおります。

そして、子どもたちが大きくなっていくこと!
まあ、あのときの子がこんなに立派になって…と遠縁のおばちゃんのような目線で見ています。

かつて店をたたんで町を去った家族のその後の顛末、藍子とマードックがイギリスから帰国することなどを受けて藤島ハウスを含めた大引っ越し大会。
近所で多発する賽銭泥棒に放火騒ぎ。
常連に訪れる転機と青の大きな決断とは???

本シリーズは、安心して読んでいられます。
家族や常連さんを通じて何らかの謎やトラブルが持ち込まれ、それを堀田家の才能と情に溢れた面々がそれぞれの得意技を活かして大団円。
悲しいこともおこらないわけではないのですが、フォローもしっかりとなされているので、すっきりとあたたかみに満ちた読後感が得られるのです。

本シリーズには「あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ」と献辞が添えられています。

そういう意味では、私にとっては小説界の「水戸黄門」なのです。
ほかにもたくさん魅力的な時代劇シリーズはありますが、水戸黄門がお子様からお年寄りまで一番安心して楽しめるシリーズなのです(個人的見解)
以下は私の考える水戸黄門の魅力です。東京バンドワゴンシリーズにも通じるところがあるのがお分かりいただけるかと。

第一に、筋立てがわかりやすく、すっきりとした勧善懲悪。
 「鬼平犯科帳」などは、池波正太郎さんの原作で「人は悪いことをしながら良いことをする」的なテーマもあり、盗賊にも義があったり同心にも悪がいたりと救われない展開になることも多いのですが、水戸黄門はそういうのは、まずありません。
悪代官は悪代官ですし、阿漕な商人は阿漕です。なので、「助さん格さん懲らしめてやりなさい」で溜飲が下がります。

第二に、暴力シーンがあまり残酷でないし、だれもそれほど悲惨な目にあわない
 「影の軍団」などは、いきなり凄惨な拷問シーンなどが展開されるなど、油断できないのですが、水戸黄門はそこまでひどいシーンはないです。
 また、その回のゲスト出演者は、危機一髪で助かります。他のシリーズだとぎりぎり間に合わず証拠の品を差し出して主人公の腕の中で死ぬみたいな展開になるのですが、水戸黄門は私が見た範囲では100%助かってましたので、見ていて哀しい気分にならない。

第三に、キャラクターがいろいろいて、お気に入り(今風にいうと推し?)ができる。
 他のシリーズだと主人公一強の場合が多い(暴れん坊将軍とか遠山の金さんとか桃太郎侍とか)のですが、水戸黄門は、好々爺のご隠居様、軽い二枚目の助さん、真面目で落ち着いた格さん、愛嬌ある三枚目のうっかり八兵衛、渋い風車の弥七、お色気担当のおぎん、たくましい飛猿など、視聴者の様々な好みに対応していました。
 この辺りは、東京バンドワゴンで多彩な魅力ある登場人物がそろっているところに通じると思うのです。

なんだか、東京バンドワゴンではなくて、水戸黄門の話を書いてしまいました。
先日、子どもたちが水戸黄門を見たことがない、という事実を知ってびっくりしてしまって、あつく語った余韻が残っていたようです・・・。

色々と考えさせられる物語や泣ける物語も良いですが、すっきりと気分が良くなる物語も心ののビタミン剤としてとても大事。
連休明け、また、きりきりと胃の痛い日々が始まります。
物語で、活力のチャージ完了です。明日から、また頑張ろう。