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小説企画~三週目~

誰も待っていない企画を更新するぞ!

5週目くらいには、この更新を待ってくださる方が現れるかしら…。

どうなっても完結するまで続けるぞー!


本文


 女神はパンの耳を宙に投げ、それを見た鳩たちが余すことなく咥え去って行った。一羽が去ってまた一羽、空中に餌がなくなると女神が再び袋の中から取り出して、程よい高さに投げ上げる。彼女のもとにも、地面にも一粒としてその粉が残ることはない。鳩を愛し、鳩に愛されたまさに、女神なのである。
 自転車の籠に満杯だったパンの耳は丸々鳩たちの胃袋へと移り、めいめいの住処へと帰って行く。女神も、自転車にまたがると公園の横の坂をブレーキもかけずに降りて行った。スピーカー付きの時計が、早く帰りましょう、を告げる。
「少年、もうこんな時間だけど」
「はい。わかってます。でもこんな時間だからこそ帰りたくない」
 眼下に広がる街並みの中に、小学生たちが目立つ。放課後が終わって、家路についたり、習い事へ移動していたりする。
「なんか、みんなちっちゃいですね」
 少年が街並みを、ちょこまか動き回る子供たちを、見下すように言った。
「そうだな」
 少年がどういう思いでここへ来たのか、数時間を無言で過ごしたのかは分からない。神であっても、そこまで読み取ることは難しい。けれど僕は、小さな社会に無理に収まろうとしてきた人類に、憐れみを感じた。
 夕日が差し込む。徐々に暗くなっていく合図だ。碁盤の目よりはるかに汚い直線で構成された町並みから、小学生の姿がまばらになってきたころ、少年は時間を気にした。
「そろそろ、帰らないとな。じゃあね…、お兄さん」
 そういうと、ランドセルを振り回すように出口へ走って行った。
彼は、また来るのだろうか。また来てほしいと思いつつ、ここに入り浸ってはいけない、と思う。人間は人間らしく、小さな世界の中でぎゅうぎゅう詰めになりながら生きなければいけないのだ。自分の居場所を確保して、誰かを追い出すことも、必須スキルだったりする。やけに落ち着いた少年に追いつかないくらいのスピードで、僕も帰路についた。


ではまた来週

ちゃんと短くなっている…。

モチベーション、上がれ!

また来週も更新するからな!

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