悲嘆の「揺ぎ」は「揺ぎ」のままに 〜二重過程モデル〜

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当院の※チャプレンさんからグリーフケアの背景理論についてのオンラインレクチャーがありました。

グリーフケアについては視点や態度、向き合い方や共感といった内容を今まで主に聞いてきましたが、理論の話についてはチャプレンの口から伺うのは初めてだったので大変勉強になりました。

段階モデル・課題モデル・認知的ストレスモデル・意味再構成モデルなど、様々なモデルが紹介されましたが、一番印象的だったのは「二重過程モデル」です。

二重過程モデルとは、ご遺族の方は「二つの志向」の中を揺れ動くとするモデルです。二つの思考とは、「悲しみに向き合う過程(喪失志向」と「新しい生活に取り組む過程(回復志向)」です。

前者は、悲しみや心の痛みを感じながら、故人との絆を再配置していきます。後者は、死別の結果生じる二次変化(例 家事を行う、仕事を見つけるなど)に焦点を当て、ある意味気を逸らしながら今後の人生を考えます。

最初は喪失志向が多い状態から、徐々に回復志向が増えていくことが通常です。一時点では二つの思考性が同時に起こることはありません。そして、悲嘆の過程で大事なのは、一つの志向性に固執せず、二つの間を「ゆらぐことができること」されます。

喪失志向がずっと続くならば、悲嘆は否定的な感情・身体・行動反応として遷延しやすく、逆に回復志向ばかりが強い場合は、故人との関係性から回避的となり、悲嘆は疎かになるために、これも悲嘆は複雑化しやすいです。

この話を聞いて、ご遺族の方にとって、悲しみは乗り越えるものではなく、ご遺族の方の心の中に残り続け、いつまでも思い出すものとしながらも、少しずつ回復志向の中にも生きていかれるんだということを改めて思いました。

※チャプレンとは
個人の信条・宗教によらず、生きていること自体により生じうる“根本的な苦痛やつらさ”の緩和を担当する「心のケア(スピリチュアルケア)」の専門職です。

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