「今夜、すべてのバーで」パテ選び
中島らもを
初めて歌舞伎町の地下のライブハウスで
見た時のことを今でも鮮明に覚えている。
彼はもうすでに、
弟子かスタッフに両腕を支えられないと
階段も降りれなかった。
それなのに
椅子に座って
トークライブが始まって
マイクを握ったとたん
信じられないほど饒舌に
面白トークを繰り広げたのである。
中島らもは
アルコール依存症である自分、
弱い自分をさらけ出しながら
自虐と知性と冷静さを持って笑いにかえ
エッセイ、小説、脚本、歌で
思いを表現した凄腕のアーティストだ。
「今夜、すべてのバー」
は、半分自伝でもある。
この本で、主人公は重度のアル中と診断され
入院をして病院の先生に言う。
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「飲む人間は、どっかが欠けているんですよ。
自分か、向かい合ってる世界か。
そのどちらか、両方かに
大きく欠落しているものがあるんだ。
それを埋めるパテ選びをまちがったのが
アル中なんですよ」
先生は言う。
「そんなのあまったれた寝言だ」
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アルコール依存症だけではない
らもさんのいう自分の中の欠落や
それを埋めるパテはだれにでもある。
寂しいけれど、
その穴を自分で知るのも大切で
正しいパテを選べたらなによりだ。
らもさんが
アルコールなだけで
わたしにだってある弱さ。
自分と向き合うとき
アル中を面白おかしく書いた
この小説を
なぜか笑いながら読んでしまう。
らもさんから学ぶ
自分の弱さを受け入れる力
からも生きるヒントがあると思う。
#中島らも
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