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小詩集~Facebookページ雀の涙、より

たっぷりお酒をのんで

たっぷり記憶を消した

記憶にあるのは

ハムスターたちの

笑顔のように口もとをむすんだ死に顔

二年の生涯になんの悔いもないような死に顔

お酒をやめて

ハムスターを飼うのもやめた

悲しすぎるから

酔いから覚めて生き延びて

老いてなぜか

子どもの頃の後悔に満ちた記憶が

よみがえるようになってきた

幼児期を生きなおしているように

そして幼い日の時間はあまりにながく

子どものままぼくの命は尽きるのだろう

緑ふかき初夏の街

そしてここがふるさとの国

いつわりなき浄土

小動物のさいわいの

静かな午後

私の住む街

花の国

鳥たちは不在

私もあるやなしや

花水木


水に祈る

われらの時代の透明で

涼やかなることを

われらは清涼なることに

耐えられない生物

穢れに生まれ

穢れに死ぬ

ただひとときの休息に

こころおだやかな夢をみる

大地から空へ

空から大地へ

相転移をかさね

うつろいゆく年代記に

祈りをしるす

夜半に目覚め

食べるものがないから

深夜スーパーに買い物にゆく

歩道に水溜まりがにぶく光る

寝ている間に雨だったんだ

開花した桜も慈しみの水を含み

おだやかな息を吐くように

やすらいでいる

夜を歩む少数派だから

あえて遠回りして帰ろう

ハムスター哲学原論


近代哲学は人間の自意識から始まった

我思う

我は懐疑しえない事実とみなされた


我なんていいかげんなものだ

屠殺場の牛のまなざしに

私の自我は粉砕された


世界に私の自我があるからといって

なんの意味があるのだ

我思うゆえに我なし


私の世界は

他者により導かれる相互主観の世界

ハムスターが見つめるゆえに世界あり

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