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断酒の道行

断酒の詩集

🐢🐢🐢🐢

ぬかるみを歩いてきたから

あしあとは残っていない

ぼくが何者であるか

もはやぼくにもわからない

年老いたのかも考えられない

いつもくたびれた生き物だった

ふりかえっても記憶はあてにならず

悲しいかって?

とんでもない

過去も未来もぼくを束縛できない

ぼくはお気楽に歩き続ける


🐢🐢🐢🐢

私は愛す

ちいさきちいさき花を

ただ群れ咲くのでなく

一つ一つがたえなる姿

毅然たる造化

ちいさき花を愛す

夕暮れの道を断酒会へ歩む


🐢🐢🐢🐢

演歌集より

母恋有情


人になつかぬ子猫のように

逃げて隠れて人を見る

母がよべども身を潜め

藪にまぎれるその藪の

風にゆれます ああ彼岸花


酒でつぶした人生の

哀れと小遣いくれる母

その愛さえも酒にかえ

苦労に縮めたその寿命

母の墓には ああ彼岸花


墓にそなえる酒きっかけに

呑んでつぶれた時もある

一人泣いては久々に

まいるお墓は藪のなか

涙も染める ああ彼岸花


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演歌集より

御堂筋の秋


夏の疲れにひきつる足を

いたわる妻のいとおしさ

おまえに踏まれてぎんなんが

汁をとばしてくだけ散る


異臭ただよう御堂筋よ

糞にまみれたあの頃の

記憶うらめし ああ俺はアルチュウ


一方通行の御堂筋

車は南へくだるだけ

俺とおまえのめおと道

迷いためらい みぎひだり


恋の出会いの中之島から

幾とせぶりの道行か

本町あたりでいたわりあって

生きていようと

やっと言う


銀杏並木に風ざわめいて

まず今日一日の酒断ちに

命いとおし ああ俺はアルチュウ

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