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小松左京の青春の妖気
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小松左京の小説に「くだんのはは」があります。九段の母、ではありません。くだん、という妖怪の都市伝説です。
しかし、作者の少年時代の空襲体験をベースにした妖怪譚で、戦争賛美の九段の母への逆説として、一種の反戦文学とみなせます。
👿
くだん。漢字では、件。
富山の立山には、人面の獣、くたべ、の目撃談がありました。それが江戸に伝わり、くだん、となります。
江戸時代の剥製の制作技術はかなり高度なもので、河童の剥製や人魚の剥製など、異様なるものも作られ、人面牛身のくだんの剥製も残っています。
災厄のあるときに出現する、とされ、災厄を鎮めてくれる。
😱
といえば、疫病封じの祇園信仰、牛面人身の牛頭天王、を連想します。
「くだんのはは」に登場するのは、牛の頭をもつ少女です。やはり、くだん、がうまれるのは災厄の前兆で、日本は第二次世界大戦の泥沼にむかいます。しかし、くだん、が生まれた家は災厄をまぬがれる。あの、神戸阪神大空襲のなか、その家のみ無傷で残ります。しかし、くだん、は、災厄が過ぎ去れば死んでしまうのです。
じじつ、小松左京のすんでいた、西宮には、戦時中、くだん、が生まれたという、うわさがひそかに流布していたそうです。
屋敷の奥座敷に隠された、振袖を着た牛頭の少女。
思春期を軍国少年として生きて、空襲の惨劇ににげまどう小松左京の体験の、不条理が、少年のイマジネーションに、あるなまめかしく、凄惨な妖怪の姿として凝縮したのでしょう。
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