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そのうち20%。(超短編小説#6)
カップにはカフェラテがまだ半分以上残っていた。
いるはずもないのに、久しぶりに感じたにおいにハッとした。
『このにおいが世界で1番好き。』
『そして、このにおいが世界で2番。』
そういって彼女はグイっとこちらの右腕を持ち上げ、paul smithの香りに包まれている手首に鼻をくっつけた。
彼女が世界で1番好きなにおい。
そのにおいを感じて、いるはずもない彼女の気配を探してしまう。
声もしないし、姿も影もない。
けれど頭で理解しながらも、下を向く頭のうえでは、自衛隊による頼んでもいない懸命な捜索が繰り広がっている。
世界で1番好きだったにおいの成分は、
20%の思い出した嬉しさと、
30%の切ない懐かしさと、
30%のもう戻れないツラさと、
何か分からない20%でできているのではないかと思った。
でも気づかないフリをしていただけで、その20%はきっと、
『会いたい』
だったりするのかもしれない。
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