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シンデレラのあなたにガラスの靴を履かせたいぼく #超短編小説

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かめがやひろしの超短編小説マガジンです。
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2017年9月の記事一覧

9月は切なくて。(超短編小説#19)

まだ暑くて夏が戻ってくるような それでいて少し肌寒いと感じる9月は 別れたはずなのにまだ連絡を取ったり 遊んだりしている恋人との時間に似ている。 正確にはもう恋人じゃないのか。 きっとまた夏が戻ってくるというのは きっとまた元に戻れるであり すっかり涼しくなってしまったは もう恋人には戻れないということを表していて 楽しかった週末と 会いたくて切なくて泣きそうな平日をも 表している気がする。 大好きな大橋トリオは 『君の居ないこの街に 慣れてしまう日もいつかくるだろ

ポケットにある会いたい。(超短編小説#18)

久しぶりにLINEをしてみたら すぐ既読になったけれど 土曜日と日曜日を挟んで 月曜日にも返信はなくて 火曜日の夜にやっと返ってきた。 週末はなにをしていたのだろう。 誰と過ごしていたのだろう。 返信のこない不安をかき消す喜びが あっという間にそんな不安に再び上塗りされて 胸のなかでザワザワと音がする。 いつ会えるのかな。 ポケットに手を入れると 週末は出張でまた忙しいんだ とポケットに手を入れた姿を 見られたようなメッセージがくる。 今日もポケットから 『会いたい

ビビッとこないだけ。(超短編小説#17)

先週の合コンで連絡先を聞かれた。 爽やかでなんとなく好みな感じだったから にこやかに連絡先を教えたけど あれから連絡は来ていない。 友達に予定を聞かれた。 ランチと聞いて問題なさそうな 日取りを送ったけど 自分のお気に入りのスタンプを最後に 『既読』という二文字が 無機質にこちらに顔を向けている。 こういうときは 上司にねちねち嫌味を言われ 仕事のメールの返事を忘れ 18時までにATMに立ち寄れない 自分なんて世の中にいらないと 思われてるのだ。 と全力で思うくら