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うたまとめ

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これまでnoteに公開してきた詩群をここに紹介しておきます。
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#現代詩

ポエムFile.5「青いシャツ」

天使のような 青いシャツを まっすぐな物干し竿で 光ごと差した 感触をしっかり 確かめたかったから けど光はバブル崩壊 のように迷子と化した ぱたぱたと ぱたぱたと 廃線の駅のレールの 先の終わりなき終点で 青いシャツが はためいている

ポエムFile.7「危険なトマト」

トマトが嫌いな人に トマトを百個贈らせて いただきます ありがとうございます え?違うって?問題は そこじゃない? たしかにそうなのかも しれない けれど僕はトマトを 嫌いな人に百個 贈りたいだけなん だけど違うのかな トマトってそんなに 危ないものだったの?

ポエムFile.9「朝の光」

パンにソーセージを 挟んで食べるつもりが ケチャップがない マスタードがない 怒りの炎が朝の暁 仕方がないそのままで 食べるむしろこのまま の方が素の味でいいの かもしれない 食べたけどなんとも 言えず悲しさが光を 帯びた食器を片付ける ブラックホール 発動せよ

ポエムFile.14「世界の音楽」

まな板で玉ねぎを 切る音 夜中に アコースティックを 鳴らす音 満月に映える花瓶と 虫の栄華 木の鉛筆の 粉が一冊のノートに 降り落ちる時 世界を奏でているのは 震え渡る旋律 秋の山のアンサンブル オルゴールのように

ポエムFile.15「その人は」

墓参りに行く道は 険しく果てしない ように思われた 杖を地面に叩き付ける 音のような 鈴のような 登っていくその姿を 子どもはどんな眼で 見つめていたのか 朝日に洗濯物が 洗われるように 干されるように その人は深くこうべを 垂れていた

ポエムFile.18「刺身」(気軽に読む詩シリーズ)

この魚の名前を 私は知らない 「いただきます」 彼らは生きていた この魚は私たちの 期待を満たすために 産まれてきた わけじゃない! 過去の記憶に兄弟姉妹 水面の影を泳いでいた 「ごちそうさま」 日々の生活に 忙殺され 私は水面に消えて漂ふ

ちょびっと長めの現代詩シリーズ「ビー玉」vol.8

冬のリビングにて 白い猫が日向ぼっこしているよ 尻尾ふりふりパタパタ ポンッ! ポ・ポ・ポ・ポ・ポンッ! 天井から虹色のビー玉が産まれ落ちた すぐさま落ちてきたビー玉目掛けて猫パンチ! シュッ!シュッ!カッ! ポンポン虹色のビー玉落ちてきて 赤・黄・緑ときどき青・紫その他色色 その辺の雪よりも綺麗な天井の空で 猫パンチは加速していく どんどん床にビー玉溜まり 部屋にビー玉充満していく ゴロゴロゴロ・・・ まさに今遊んでいる猫を その大波で襲い掛か

ちょびっと長めの現代詩シリーズ「遊歩道」vol.9

冬木立に囲まれた 遊歩道にはしとしと遠く まで 雨が 降っていた 手を繋いでいるこどもが 何やら舌を出し 空を見上げて おぼつかない足取り 嗚呼 そんなことしちゃ 傘の中まで雨が降ってきちゃうよ と 思いつつ 僕もこどもの真似をしてみた 反対側から歩いてきた 女の人 少し 引いていた 雨はちょっと苦くて宇宙の味のしびれ具合で 僕は思わずその場を跳ねた ずぶぬれになりながら こどももそれを 真似して跳ねた 少し 微笑んでいたような

余り歌シリーズvol.8「宇宙の珈琲」

何もない マグカップの中の 透明な空間 それは宇宙 そこに火傷しそうな 熱いコーヒーを注ぐ もしかするとあの宇宙 を覆い尽くすあの黒い 物体は私たちには寒い 空間だけれど 宇宙にとっては あったかく黒い コーヒーの雫の集積で あったのかもしれない

余り歌シリーズvol.6「光」

恐竜の足を たどる僕がいて それを上からプテラノドンが 見下ろしている 果てしない草原の中を 首長竜が 親子で二頭 のしんのしんと 歩いていく 少し笑みを浮かべて 前方を歩いていた恐竜が 振り返る ティラノサウルスだ! ドカン!ドカン! 火山の噴火だ 急げ 急げ 天地雷鳴激しく タイムワープに吸い込まれる最中 首長竜の ひ と み が 眩しい!

余り歌シリーズ「仮免許に落ちた」vol.11

仮免許に落ちた 天国から落ちることなく 現世で生き永らえながら 仮免許に落ちた 本免許ではなく 仮免許に 落ちた (仮)免許に 落ちた 仮免許に落ちた けれど空を飛べる 人は つばくらめのように 優雅ではないけれど 飛行機のジャンボジェット機に乗って エコノミーシートに座り 甘いトロピカルジュースでも飲みながら 仮免許に落ちた 一瞬脱輪して また元通りに カーブを曲がり 坂を上っていった あの時のように 誰が見ても落ち込んでいるようにしか見えない 佇まいの肩の

余り歌シリーズvol.5「影絵」

母とひさしぶりの外出 外は車が混んでた そして前方の車には 子どもらの影絵 すごくはしゃいでいて とても楽しそう 遠くの海を 眺めるように 僕は視線を 横にずらした あの子たちの未来に 何が残せるだろう 母と二人 ここにも未来がある