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女子サッカーの決勝戦と表彰式だけは新国立競技場で行われる予定であり、つまりは彼女達の戦いは国立競技場への道でもある。

サッカー界だけだろうか、『勝ったのは選手のおかげ、負けたのは監督・コーチのせい』という言葉がある。
近年はそれを感じさせてくれる指導者はあまりみない。別に、負けた事を選手のせいにしているとか、自分のプランに間違いがなかったと自信ありげに語るとか、そういう事ではなく、何となくだが、「私は雇われて、このチームの監督をしています」という人が増えた気がする。もしくはコーチの気持ちのまま、「私は選手と一緒に闘っているんだ」というタイプの、どちらかしたいないような気がする。
話しは変わるが、サッカー女子日本代表(なでしこJAPAN)の高倉監督は、オリンピックを前に腹を括ったのを、代表選手メンバー発表の時に感じた。
女子代表が結果を出し、人気があった頃の監督は佐々木則夫であり、男子だった。良い意味でも悪い意味でも、前監督の影響力は強く、今まではその財産で試合をしている感じを拭えなかったのだが、今回オリンピックに臨むにあたってはその影響を払拭した感じがしたのだ。つまりは、冒頭の『勝ったのは云々』という言葉につながり、やっと、負けたのはすべて私のせいです、と言えるチームを作る決意をしたように思えたのだ。
もちろん、チームの成り立ちは現在の選手の能力だけでなく、積み重ねも少なかなず影響があるものだ。
佐々木監督が率いた「なでしこJAPAN」は、W杯優勝やオリンピック銀メダルなど結果を残しており、その結果は監督が目指したパスサッカーが、女子においては世界に先んじていた為の結果とよく言われる。が、確かにそれは、直接的原因ではあるのだろうが、佐々木監督が就任前の積み重ね、強化の歴史も忘れてはいけない。

そう、かつて『なでしこ達』がそう呼ばれる前の女子代表は、結果の出せないチームであった。世界では元より、アジアにおいても、当時の強豪であった中国や韓国に勝てる事は稀だったのだ。そんなチームを、基礎体力の強化や、スライディングタックルのトレーニングなど、言ってみればサッカーの基礎を指導し、90分走れる、きちんとサッカーのできるチームへと強化していたのは、佐々木氏より前の監督、コーチ達であった。
その基礎が出来つつあったチームの監督に就任した佐々木氏は、男子ならば、しごく当たり前の指導、つまりは、アイコンタクト・トライアングル・スモールフィールドなどを持ち込み、さらにパスで繋いで相手を崩してゆくサッカーを目指し指導したわけだ。

当時の女子サッカーにおける強豪国といえば、米国、ドイツ、スウェーデン、中国であり、どの国も体力や身体の大きさで相手を弾き飛ばす、男子顔負けの格闘系の競技であったのだが、その中でボディコンタクトを避け、パスを繋ぐだけでゴールまでボールを運んでしまう「なでしこのサッカー」は、当時の男子プロサッカーチームならば当たり前だったが、女子としては画期的、なおかつ効果絶大だった。
北京オリンピックで対戦した中国やスウェーデンの選手が何もできず置き去りにされ、呆然とする姿は、応援する日本人としては小気味良く見え、対戦国としては驚異だったに違いない。

時代の流れは、すべての国がパスを繋げて当たり前と成り、体力とスピードと体格でなでしこを上回る国も数多い。そんな中で勝ち抜いてゆくチームをどうやって作ってゆくのか。
高倉監督は五輪前の合宿での体力強化を目指しているようだが、それを怪我をせずに手に入れるのは簡単なことではない。
前任者を含め、かつて女子代表を指導していたのは男子コーチ達だった。そのことは、遠慮とは言わないが様子見の部分もあり、それが良い方向での強化に繋がった部分もあった。しかし、高倉監督は良くも悪くも同性である選手達に遠慮がない。
男達の目は誤魔化せても、私には通用しないよ。と、言ったか言わないかは知らないが、同監督の元で故障する選手は多い。
だからなのだが、私の個人の意見としては、メディカルだけではない強化に対して優秀なトレーナーと、戦略的な助言ができるコーチが必要なのではないだろうか。

東京オリンピック2020のメイン競技場は、言わずと知れた新国立競技場だが、その中心はもちろん陸上競技であり、球技が行われる予定は少ない。
実は女子サッカーの決勝戦と表彰式だけは新国立競技場で行われる予定だ。
つまりは、女子サッカーにおいての戦いは国立競技場への道でもあるのだ。
出来れば『なでしこJAPAN』のメンバーが故障者を出すことなく、決勝への道を進んでゆくことを願っている。

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