「Milk outside a bag of milk outside a bag of milk」をプレイしました。

牛乳は……もう……。

精神が不安定な女の子が牛乳を買いに行くのを見守り時に手助けなどをするロシア発の奇ゲー「Milk inside a bag of milk inside a bag of milk」の続編、「Milk outside a bag of milk outside a bag of milk」をクリアしました。

こちらは前作で牛乳を買って帰ってきた主人公が、お家で無事に眠るまで、その思考に付き合ってあげるポイント&クリック形式のADVゲーム。
前作では主人公の少女がただ「牛乳を買って帰ってくる」間に、「そのビジュアルノベルのプレイヤー」として彼女の世界や回想を少しだけ垣間見れるタイプのゲームだったのですが、今作ではガッツリとコミュニケーションをとり、彼女のとっ散らかった思考を集めながら、暮らしぶりや詳しい過去についてを断片的に掘り起こしていくシナリオになっています。
全実績を解除したのでさくっとレビュー。

こちらは私のSteamのレビュー(https://steamcommunity.com/profiles/76561198843394706/recommended/1604000/)と同じ内容です。

前作に比べてちょっとお値段が張りますが、内容も非常に補完されており、個人的にはとても面白かったです。
基本会話と選択で進んでいくため、ボリュームは人によっては少し足りないと思うかも。
私はおすすめはしますが明らかに人を選びます。

下記、よかったポイントとマイナスポイント(ネタバレ無し)

■前作に比べて得られるようになった情報が格段に増えた
・OPとEDのアニメーションが追加されて前作での(私たちから見た)様子がイメージとしてわかるようになった、それに伴い主人公のグラフィックが大幅に強化(かわいい)
・主人公の暮らしや、過去何があったのか
・"O"のこと
前作をプレイして主人公のことをより深く知りたくなった、その続きを見たいと思った人はもちろん、彼女に関するたくさんの補完情報が出てくるので、前作よくわからなかった…と思う既プレイの人にもおすすめ。

■BGM◎
こちらも前作から格段にボリュームアップ。ノイジーでサイケなアンビエントが好きな人には本当におすすめ。OSTはなんと無料でDLできちゃう!
ラジオから聞くことのできるBGMも良です。

■翻訳◎
今作の雰囲気に沿って、奇妙な夢をなんとか言語化しようとした時のような支離滅裂さを味わえる、日本語化への意欲を感じる良翻訳。
前作は一度英語でプレイしたあと日本語でもクリアしたのですが、そちらも良翻訳でした。

■エンドや会話のバリエーションが多い
エンドは条件で分岐あり。
ただ、その世界観や設定の不安定さから、急いで全エンドを回収しようとすると頭痛が襲ってきます(きた)
途中の選択肢によっては聞けない会話もあるので、ゆっくりとプレイするのがおすすめです。

■セーブを分けられない、ログが読めないのは×
エンドにいくつかの分岐があり、さらに選択による会話が中心なのに、セーブを分けられずログを読めないのはマイナスポイント。

■その他、このゲームのすべてが人によっては合わない
上に挙げた個人的に魅力を感じるポイントを含め、要素要素すべてが、合わない人にはとことん合わない、そんなゲームです。


前作が面白かったと思える人はプレイを強くおすすめ、前作未プレイだけどトレーラーなどを見て気になる人はまず前作(安い)からプレイすることをおすすめ。
虫や支離滅裂な発言、不安定な子供の描写が苦手な人はあまりおすすめせず、精神が不安定な人や身近な人が(主に前作のゲームに描写されているような方法で)亡くなった経験のある人はプレイ非推奨。

できれば、物事を徹底的に俯瞰して見られるくらい精神が強靭な時にプレイした方がいいです。不安だと思ったら、避けてもいい。そういうゲームです。

そして、貴方が買って帰ってきたその牛乳の袋の中の牛乳は、絶対に飲まないでください。


↓以下、エンドに関するネタバレ(核心には触れていませんが未プレイの方はスクロール閲覧非推奨)























各エンド、ざっくりした内容はこんな感じ。

◆男の子(日本語だとトレスカ)が牛乳を買いに行くのを助けるエンド。
おや?どこかで見たような…。本当に正しく助けられるのかな。

◆扉の外に誰かがいるエンド。
何もない部屋の外に誰かがいる、扉を、早く、早く。

◆コンクリートの高い塔とどこまでも続く階段エンド。
登っているのか、降りているのかももうわからない。

◆あなたの友達エンド。
空っぽの私を埋めるのはたくさんの思考だけ。あなたは友達?

◆全部うまくいくエンド。
おはよう!早く学校に行かなきゃ。毎朝鏡で自分の顔を見るのは嫌になっちゃうけどね…

各エンド(夢)、基本的なところは同じなのに、UIとグラフィックがそれぞれ違うのがまさに『ゲーム』。
前作と今作の冒頭で「自分はゲームの中の主人公だ」と言っていた彼女が示すゲームというもの、それらすべてが彼女の中に暮らしている蛍であり世界であり思考であり、我々はそれに関与できないし、救うこともできない。
プレイヤーたる我々は、ただ本当に彼女のことを"観測"することしかできないのだなあと実感する。

あと、夢の中でのメッセージウインドウは全て「この方が好きなんだよね」と言っていた枠のない表示形式になっていた。少しだけではあるが、彼女の望みは叶えられたのかもしれない。

個人的にはとあるものを調べないと出てこない友達エンドが一番好きでした。今ならピザがお買い得。
本当の主人公は空っぽなのだけど、『友達』と一緒にそれを埋める思考と向き合うことで何かの解決になる?ならないかもしれない。
この『友達』は彼女の思考の一つであり、我々でもある。

私はこのエンドでほんの少し彼女に共感を覚えたので、袋に入った牛乳を買ってこようかなと思います。

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