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かめち
2021年7月31日 11:12
自転車を買った。中古自転車屋の店頭で日差しに焼かれていた銀色のママチャリは、カゴが錆びていて鍵がないから、六千円だった。「盗まれても諦められる値段だから」シワシワの顔で店主はそう言って、私に自転車を受け渡した。わずか十分の出来事だった。ジリジリと熱された黒いサドルに尻を乗せ、製造メーカーの欄に「不明」と書かれたその自転車のハンドルと防犯登録を握りしめて帰った。数ヶ月自転車に乗ってい