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行動経済学の逆襲 要約②

 あなたはライブのチケットを定価で買った。このチケットがいま、定価の3倍の価格で転売できることを知った(ここでは、違法ではないことにしましょう笑)。さて、あなたはライブに行きますか?転売しますか?
 あなたが、エコンならば、「転売をする」という回答になります。しかし、実際は「ライブに行く」と答える人も多いでしょう。

 今回はそんなお話に関する、第2章「観戦チケットと保有効果」の要約になります。

【全体の要約】
人間は、同じ価値のものを、異なる価値を持つものと考えてしまう。
それは、「機会損失」を「実際の損失」よりも軽く見積もってしまうからである。そのため、人間は「保有効果」により、すでに持っているものに高い価値を感じる傾向がある。

1.「統計上の命」と「顔が見える命」

次のような2つの事例を考えてみてください。

A:6歳の女の子がクリスマスまで寿命を延ばす手術をするのに何千ドルもかかる。
B:病院設備が老朽化しており、売上税がないと救える命が減ってしまう。

 Aの例の方が、Bの例よりも、多くの金額が集まることでしょう。この例からわかるように、人間は、「顔が見える命」の方が、「統計上の命」よりも
価値が大きいと判断しがちです。
 エコンならば、同一の価値と判断するはずなのに、です。

2.「命の価値」に関する不思議な実験結果

次のような2つの状況を考えましょう。

 A:あなたは致死率0.1%の病気にかかっている可能性があります。この病気を確実に治せる薬があるとき、いくらまでなら払いますか?
 B:薬の治験に参加してほしいです。ただ、この薬は体に害がある可能性があり、0.1%の可能性で死んでしまいます。最低いくらもらえるなら参加しますか?

実験結果は、Aでは2000ドル、Bでは50万ドル、という結果でした。
実験の状況はこう言い換えられます。

 A:自分の死亡確率を0.1%さげるのに払えるお金はいくら?
 B:自分の死亡確率が0.1%あがるとしたら、いくらほしい?

 つまり、「同じ0.1%の死亡リスク」を、「価値に差がある」ものとして判断していることがわかります。

3.ワイン好き経済学者の「奇妙な」行動

 大のワイン好きの経済学者ロゼットは、ずっと前に10ドルで買い、今では時価100ドルを超える価値を持つワインを所有していた。
 ワイン商が、そのワインを時価で買い取りたいと申し出ると、ロゼットは断った。自分で飲みたいからだ。しかし、ロゼットは100ドルで新しいワインを買うことはないらしい。

 この状況を整理してみましょう。

売らない:「ワインを飲むこと」に100ドル以上の価値を見出している
買わない:ワインに100ドルの価値を見出していない
 
 このように矛盾が生じた行動をとっていることがわかります。

4.「割増」と「割引」

 オンライン決済の導入に際して、商品の価格を10円あげなきゃいけなくなりました。
 そこで、ある商品Aを現金払いなら100円、オンライン決済払いなら110円で売ることにしました。
 この時、「オンライン決済なら割り増し料金」とした場合と、「現金なら割引」とした場合で、人の行動は変わってくることが分かっています。

5.機会費用

 これらの現象は「機会費用」という言葉で説明できます。

「機会費用」:ある活動を選択することで失う利益。

 人間は、「機会費用の損失」の価値を「実際の損失」の価値よりも、小さく見積もってしまいます

・命の例なら、
「薬を買わない」=0.1%の死亡確率の機会損失(薬を買えば獲得できた)
「実験に参加する」=0.1%死亡確率があがる、という実際の損失
→薬を買うより、実験に参加することの値段が高い。

・ワインの例なら、
「ワインを売らない(飲む)」=100ドルの機会損失(売れば獲得できたお金)
「ワインを買う」=100ドルの実際の損失
→ワインは飲むけど買わない。(買うのは高いと思う)
 
・割引の例なら、オンライン決済で払う時に、
「割引」=10円の機会損失(現金で払っていれば、獲得できたお金)
「割り増し」=10円の実際の損失
→割引のほうがお得感がある。(割り増しの方が高く感じる)

6.保有効果

 このように、機会損失をうまく扱うことができないため、人間は「すでに持っているもの」の方が、「手に入れられるが、まだ持っていないもの」よりも高い価値がある、とおもってしまいます。
 これを「保有効果」と呼びます。

以上が第2章の要約・解説になります。


次回予告
 次回は第3章「黒板のおかしな行動リスト」です。

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