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【F1】コラム:タイヤが招いた大波乱の結末。今後に向けて対策は必須〈2021年第6戦アゼルバイジャンGP〉

一昨年同様何も起こらないままレースは中盤まで進んでいました。レッドブル・ホンダが1-2フィニッシュ、マックス・フェルスタッペンが自身初の連勝を飾り、ルイス・ハミルトンとメルセデスAMGをチャンピオンシップで引き離す。誰もがそんな風に思っていたのではないでしょうか。それくらい淡々としたレースの矢先で起こったランス・ストロール(アストンマーティン)のクラッシュでした。8速全開で駆け抜けていく実質ストレートのターン20を超えたあたりで、突然左リアタイヤがバーストしたことが原因でした。ピレリは土曜日にリアタイヤの内圧を上げるように指示をしていました。曲がりながら全開で駆け抜けるターン16以降はタイヤに尋常じゃない負荷がかかりますから、内側からの構造破壊を防止するための対応策でした。しかし現実はストロールの新品ハードタイヤは30周で悲鳴をあげてしまったのです。

近年のF1は安全性に関して大変敏感ですので、この時点で赤旗にするのかと思いましたが、レースディレクターのマイケル・マシはセーフティーカー先導でレースを続行させました。この時ストロールのマシンはピットレーンエントリー手前で止まっていたのでピットレーンはクローズ状態、全車ピットインができませんでした。ピットレーンがオープンになったのはセーフティーカーが退出する35周目。後方のドライバーは何台かこのタイミングでタイヤ交換を行いましたが、多くのドライバーはステイアウトを選択しました。みんながピットに入ると分かっていれば入ると思いますが、後方との差も縮まった状況では簡単にピットに入ってタイヤ交換はできませんよね。そしてレース序盤からの傾向でオーバーテイクはDRSを使っても容易ではないということが、多くのチームがピットインをしない選択を後押ししたように思います。

上位勢でも多くのドライバーが8周目から14周目にかけてハードタイヤへと交換していました。そのため1回のピットストップ作戦では40周前後、このハードタイヤで走り切る必要がありました。ストロールのタイヤは30周で構造が破壊されましたから、誰もがストロールと同じような状況に陥る可能性は十分にありました。そして47周目を迎えようとしたトップ走行中のフェルスタッペンにそれが起こってしまったのです。これでレースは48周目を完了した段階で赤旗中断となりました。レース距離の75%を超えていればレースは成立しますので、これで終わってもよかったと思いますが、結局残り2周からスタンディングスタートでレースを再開させる決定が下されました。

もし仮に赤旗でレース終了が宣告された場合、赤旗提示2周前の順位がレース結果となるため優勝はフェルスタッペンのものになってしまいます。クラッシュしたドライバーが優勝というのも、前戦のルクレールの件同様に議論を呼ぶことになるため、レースを終了できなかったのではないかと言われていますが真相はわかりません。結果的にこの決断が再スタートでのハミルトンのミスを生み、チャンピオンシップにおいてフェルスタッペン、ハミルトン両者がノーポイントで終わるという結末を演出しました。ただ、チャンピオンシップがタイヤトラブルによって台無しとなってしまうレースになりかけた事実に変わりはないですから、今後このようなタイヤトラブルが起こらないことを切に願うばかりです。それとやはり安全の観点からも、300km/hで走行中にタイヤバーストが起こるのはあまりにも危険です。昨年も第4戦のイギリスGPでメルセデスの2台とマクラーレンのカルロス・サインツJr.にタイヤトラブルを起き、ピレリは翌戦以降タイヤの内圧を上げて対応しました。次戦以降の対応次第では、各チームの勢力図に多少変動が出てくる可能性も否定はできませんが、まずは安全にレースができるようにしてほしいですね。

写真:Formula 1®︎ Official Twitter

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