カフェ経営を通しての難儀
メンバーの子に引き継ぎの話をした際に問われた
「カフェ経営を1年間通して難しかったことって何ですか?」の答え。
大きく3つ。
一番最初に思い浮かんだのは、「メンバーを信頼する」こと。
言い換えれば、「自分がいなくてもこの子がいれば大丈夫」と信頼できるまでにメンバーを育成することが一番難しかったなと。
自分が店舗に立っていない時に、「自分が店舗に立っている時以上のサービスをお客さんに提供できるか」というのは本当に心配になってしまう。
それは単に接客の上手さを指しているわけではなく、店舗のBGM調整や室内の明るさ、室温、座席の居心地など店舗の雰囲気づくりを意味する。
一人一人がこういった水準に達するに必要なことは、頭の良さとかでは決してなくて、明らかにこのお店をどれだけ自分の所有物と感じられているか、という当事者意識の醸成に依存する。
当事者意識が高い子は、すぐにカフェが抱えている課題をどんなに小さくても話してくれるし、もっとわかりやすい行動としては返信が早い、MTGには必ず参加してくれる。
当事者意識を醸成する施策としては、一人一人が何に価値を感じているのか見極めて、それに沿った仕事をお店へ具体的に貢献する形で共有する。
思い浮かんだ難しいことの二つ目に、テナントの管理人とのコミュニケーション。
「管理人が意地悪だから難しい」と言う話ではなく、自分たちが気持ち良くカフェ経営をするために管理人の機嫌取りをしなければいけないという、プライドのようなものを捨てることがとても嫌いだった。
貸す側と貸していただく側、双方にフラストレーションは必ず溜まるものだが、貸す側の方が権利が強いために率直にそのフラストレーションをぶつけてくるが、こちらとしてはそのフラストレーションの捌け口がない。
「本来、貸していただく側は家賃を払っているのだから平等な権利があるだろう」という気持ちが抑えきれなくなることがあるが、その瞬間に他の物件候補をgoogle検索して、現在のテナントの好条件さを自身に再認識させている。そして、あちらの提示してくださった条件に感謝を思い浮かべている。
最後の3つ目。これが一番難しいかもしれない。
自分が作り出した環境が、メンバーの子たちへ本当に価値ある経験を提供できているのか。
その子のために良かれと思って与えた経験が、実はその子の時間を意味もなくただ奪っているのではないか、と経営を初めて約1年自問自答し続けた。
メンバーの子たちが「大変です」って言うたびに、今自分がやっていることってただの自己満足なのではないだろうかと何度も考える。
正直、カフェの売上は全然少ない。当然、メンバーの子たちに渡せるお金も本当に少ない。その代わりに少しでも、このコミュニティ内でメンバー一人一人が自己実現の場として価値のある環境でなくてはならない。お金のためにやっているなら、他でもっと稼げるビジネスに手を出している。
みんなの自己実現の場として、現在のカフェを継続させるにあたって一人一人のビジョンと向き合って、それに対してこの環境はどのように寄与できるのか考え続けなければならない。
その上で、このカフェを継続させている理由が、サンクコストバイアスによるものなのか、多くの人に価値をもたらし得る環境だからなのか見極める。
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