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対峙する景色/御射鹿池〜緑響く〜

夏の日差しがだんだんと弱くなってきて、少し金木犀の香りがうっすらとしているこの時期、私は会社を休んで御射鹿池(ミシャカイケ)という長野県の蓼科にあるため池に足を運んだ。

この池は日本を代表する日本画家、東山魁夷の緑響くの作品の舞台になっておりまたCMなどにも起用されたことから一躍有名なため池になっており、主要観光スポットからは離れているにも関わらず多くの観光客が今も訪れている。

実際、ただの“ため池“に何かを期待しているわけではなかった。けれど、車から見える御射鹿池を一瞬見ただけで本当に言葉通り、何かはっとさせられる景色を体全身で感じていることに気づいた。

車から降りて、近くに行ってみると、なぜ人々はこの池に魅了されるかなんとなくわかってくる。

木々の幹、葉、揺れる木漏れ日、森そのものが、ため池の水の上を伝わって感じるように自分の胸まで届く。 一本一本の木、一枚一枚の葉、すべて偽りなく水の上に映し出すその姿は自分の心模様を映し出しているのか。

できるのであれば、この水に映った慈愛深い緑のような嘘偽りのない心でありたい。できるのであれば、生まれたての頃のような純粋な優しさを胸に抱いているその心がここに映ってほしい。

ここは自分と対峙することのできるため池。

目に広がる景色のベクトルはなぜか自分自身。とても不思議な感覚に陥る。景色は広がるのではなく、自分に問いかけてくる。

そして私も水を通して目の前の緑に伝えかける。

自分の気持ちに嘘をつくのはやめよう、と。

ここはきっと私のパワースポットになると思う。

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