あの古いメルセデスベンツ。

あなたとの数少ないデート。あなたはなんとも思ってなかったのかもしれないけれど。わたしにとっては大切なデート。

四角くてモダン。とても品が有って、あなたにとっても似合っていたわ。ちゃんと大切にしているんだなって伝わってくるところもズルい。

意外と真っすぐな道が少ない東京。勾配や適度な渋滞。見知らぬ景色。ドキドキし過ぎてどうしていいか分からなくて。でも、ずーっとこの時間が続いたらいいなって思ってた。

あなたはハンドルを握りながら何を思っていたのかなあ?

わたしはあなたのことが大好きな自分のことばかり考えてて、あなたのことを一番に考えられなかったの。

大好きだった。今までの人生で一番苦しかった恋。


...結局。

大好きなあなたの大切にしている車の助手席は一度もくつろげなかった。

あはは。



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