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#8 “鎌倉のNPOの母” 一般社団法人ふらっとカフェ鎌倉 代表理事 渡邉公子氏から学ぶ「『NPO発祥の地』鎌倉で、市民の力でまちを良くする」

 ふらっとカフェ鎌倉では現在、一人親家庭など、食に困っている方々に食料を無料配布する「フードパントリー」の活動を行っています。月2回開催していますが1回はスマイルフードプロジェクトで、市と協働で行っています。

 私は、高校の家庭科の教諭を長くやっていたので、食については専門だと思っています。現在の社会課題は何かと考えた時に、子どもも大人も含めた居場所づくりが大切だと考えました。そこで、食を通じた居場所づくりをしたいと思い、ふらっとカフェ鎌倉を立ち上げました。

 教員時代は、非常勤でした。私は染色作家でもあったので、専任の教員では作品づくりの時間を確保するのが難しかったため、非常勤を選びました。また、青少年指導員や、子どもが通う学校のPTA会長なども務めていました。そうしていろいろな人たちとのつながりができていく中で、1999年に鎌倉市市民活動センター、通称「NPOセンター」からお声がけをいただきました。NPOセンターは、その一年前、1998年に立ち上がったばかりでした。

NPOセンターに入った時、「なんて素晴らしい人たちの集まりだろう」と感動したものです。右も左もわからずにパッと入ってきた私を、みなさん、快く受け入れてくださったのです。意見を言っても、否定をされることがありません。皆さん、「いいね」「そうだね」とおっしゃってくださり、すぐに打ち解けることができました。

 その後、2005年にNPOセンターの事務局長になり、理事長職を仰せつかって、2017年の任期満了まで務めさせていただきました。それから、ふらっとカフェ鎌倉を立ち上げたわけです。現在は「フードバンク鎌倉」という団体も立ち上げ、農家の方など様々な寄付をいただき、ふらっとカフェ鎌倉との両輪で、社会課題に向き合っています。

 鎌倉というまちは、日本のNPOの元祖といわれています。大正4年に、現在まで続いている鎌倉同人会ができました。大正12年には関東大震災が発生し、鎌倉も大きな被害を被りましたが、鎌倉同人会を中心としたボランティアの方々が、復興に向けて尽力をしました。市民による活動というその“風”を、今の鎌倉のNPOの多くが引き継いでいます。

 公設市民運営も、鎌倉が全国に先駆けて行ったものです。役所が決めて役所が運営する公設公営や、民間による民設民営というのはありましたが、公設で市民が運営するというのは日本初のものでした。

 何か課題を見つけたら、鎌倉の人たちはすぐにNPO団体をつくります。大きな団体はつくりませんが、賛同者を集めて、小さくても精力的に動くNPO団体がとても多いです。これは、鎌倉のNPOの特徴であり、素晴らしさだと思います。市がああしなさい、こうしなさいといわなくても、市民がNPO団体をどんどん運営をして、長く続けていくというのが、大正時代から続く鎌倉の市民活動です。

 NPOセンターの事務局長をやっている時に、都内の小学生が視察に来てくれたことがありました。NPOセンターでいいの? 鎌倉だったら寺社仏閣に行った方が良いのでは? と思いましたが、その小学生の子たちは「いえ、ちゃんと調べて来ました。鎌倉はNPOの発祥の地と知りました。どうやって市民活動を行っているのか、学びたいんです」と言うのです。その子たちのおかげで、あらためて思いました。鎌倉は、市民活動によってより良くなっているまちなのだと。

 市民がやろうと思った時に率先してやっていく魅力が、鎌倉にはあります。ですが、最近は変わってきているのも感じています。私がNPOセンターに入った頃は、自由で、規格外の団体がたくさんありましたが、今は型にはまってきているような気がしてなりません。もっと、自由な発想で活動をしてもらいたいです。

 デジタル化した世の中にあって、いろいろなものが機械化しています。機械化することによって、人間として失うものも多いのではないでしょうか。科学の進歩は、考えない人間を生み出しているように思います。やはり、一つひとつ考えて行動することが大事です。インターネットで何でも調べられますが、そこから得た知識や情報は、自分が体験して学んだものではないので、地に足が着いていません。これからの鎌倉を担う若い方々には、地に足を着けて、自分で考え行動する人になってほしいです。そして、社会課題を見つけたら、即行動に移してください。行動することによって、また新たなことが見えてきます。多様なNPOを立ち上げて、まちを良くする市民活動を行ってきた鎌倉の先人の皆さんのような活躍を期待しています。

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