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映画『幻滅』作品レビュー

フランス文学の大古典、バルザックの同名小説をフランス映画界の実力者俳優を揃えて映画化した本格的文芸作品。仕上がり重厚で見応え十分である。
19世紀フランスの社交界、マスコミ界を舞台にしながらも、描かれる内実はその普遍性ゆえにきわめて今日的様相色濃く、バルザックのよき理解者ではなくとも『人間喜劇』と総括される作品群の一角をなすに相応しい一篇であること十分納得できる。若い詩人の夢と情愛は、既成の権力、資金力、打算、駆け引きにもろくも踏み躙られ砕け散って、その理不尽さが鮮明に描かれている。マスコミがある種の強大な権力に蹂躙されるありようは日本にとどまらずフランスにあっても、かかる作品が生み出されるような状況であるとするなら、実に深刻であり憂慮される社会的実相であると言わざるをえない。豪華出演陣のなかにあって、贔屓のグザヴィエ・ドランがパルザックを思わせる役柄で起用され、狂言回しよろしく一人称で語り続けてくれて、ファンとしては嬉しい配役である。

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