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映画「妖怪の孫』レビュー

個人的感情としては積極的な鑑賞に気乗りしないドキュメンタリーだったが、内山雄人監督の前作『パンケーキを毒味する』に関心を寄せた立場で本作をスルーは出来ない。(参考: https://filmarks.com/movies/97118/reviews/116087109)古舘寛治のナレーションも定番感があって作品に入りやすかった。右と左、上と下という導入部での図式の提示が、分かりやすいリードになって、前作よりずっと内容明快、説得力豊かな仕上がりだった。I am not ABEを掲げるプロデューサー兼原案者の古賀茂明氏も前面に出て、作品のスタンスも明瞭、ブレるところなかった。覆面官僚の発言は興味深いものがあるし、放送法をめぐる当時の様子が回顧されタイムリーだが、驚くような目新しい事実の提示まではなく惜しまれる。また、マッカーサー主導で構築された日本の戦後民主義体制を、なぜアメリカがA級戦犯のひとりを政界復帰させてまで、かくも露骨に改変、刷新しようとしたのかが掘り起こされずカタルシスを得られるまでには創り込まれていない。最後に監督自身が将来への不安を語るだけではメッセージとして物足りない。さらなる踏み込みに期待したい。

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