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映画、演劇、書籍(文学)等、文化全般にわたるレビューを書いています。ランダムにマガジンにまとめてみました。
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2022年7月の記事一覧

源氏物語 1

源氏物語 1

『1946・文學的考察」で福永武彦が書いた「源氏や西鶴を読むことは、原書でジイドやロオレンスを読むことより一層むずかしい」とのくだりに、はたと思うところあって恩師鈴木日出男先生が校註者のおひとりとして並ぶ小学館『新編日本古典文学全集』ハンディ版『源氏物語』①を巣籠もりGWの一冊とした。
修士課程の2年間、指導教授中西進先生がプリンストン大に招聘された事情により、院生としての研究の最初の手ほどきは日

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源氏物語 2

源氏物語 2

鈴木日出男先生の学恩に浴しつつ『源氏物語』巻4「夕顔」まで読み返したところで、もう一人の源氏の恩師池田勉先生の『源氏物語試論』を学部時期以来45年ぶりに通読。池田先生御退官直前の学部2年の時、先生に顧問をお引き受けいただき同級3人で源氏輪読会を週一回で始めたものの諸事情あって半年しか続かなかったことが今となると悔やまれ、先生からは最後に無理しなくてもいいよと優しくお言葉を頂戴したことが懐かしく胸締

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源氏物語 3、 4

源氏物語 3、 4

源氏物語 3

『源氏物語』通読、「若紫」と「末摘花」2巻は最もお世話になった新潮社の日本古典集成版で。色刷りの傍注がありがたく、さくさく読めます。2021/05/17

源氏物語 4

『源氏物語』第七帖「紅葉賀」は、序盤の最も美しく切ない典雅な一巻。光源氏は18歳。あでやかな舞姿の輝くばかりの美しさは、その若々しさとも相まって観る者に感動ゆえの涙を誘わずにはいられないほどだった、と語り手は伝え

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源氏物語 5

源氏物語 5

『源氏物語』第九帖「葵」は、物語として誠に素晴らしい一巻で、いつ読んでもうっとりさせられる。この春も中止となった今なお続く葵祭(賀茂祭)を背景にした車争い、六条御息所の切ない想いと生霊と化して葵の上を取り殺してしまう怨念、光の葵の上への思い、紫の上の成長と婚姻、禁断の子夕霧の誕生などなど、どこをとっても王朝物語然とした申し分ない品揃えである。原文を典雅な気分でたどりながら、ふと思い立って谷崎、円地

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源氏物語 6

源氏物語 6

『源氏物語』第12帖「須磨」13帖「明石」は序盤の大きな転換点として興味深い所謂「貴種流離譚」。朧月夜との契りが引き金となり政情への懸念から光は須磨へと退く決意をする。今の感覚からすると、とても辺境とは思えない名勝だが、畿内を離れるということはそれほどに深刻だったということを読書体験させられ現代にも通ずる小説的展開となる。荒涼たる海浜であることもあり、おそらくは光にとっての経済基盤たる荘園だったの

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源氏物語 7

源氏物語 7

『源氏物語』第十四帖「澪標」から第二十一帖「少女」までは、京に復帰した光の栄華に向かう足固めとなる物語。このあたりの雰囲気を象徴的に表しているのは第十七帖の「絵会」である。藤壺との不義で産まれた冷泉帝が即位し、光は内大臣となって、明石の君は女子を授かる。六条御息所が出家後、娘を光に託し世を去り、末摘花や空蝉との物語をはさんで冷泉帝に入内した故六条御息所の子の絵画への造詣がクローズアップされることに

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源氏物語 8

源氏物語 8

 寂聴御大が嫌なヤツと評していた玉鬘の美しさとそれを取り巻く光はじめ男たちの思惑が様々に交錯する第22帖から31帖「真木柱」までの所謂「玉鬘十帖」は『源氏物語』第一部を締め括るのに相応しい光源氏の隆盛をもあわせて描く典雅なひとまとまり。
 精緻な心理描写や六条院の季節の移ろひによって物語に奥行きがもたらされ、紫式部の筆の成熟を感じさせる。全体の通奏低音部と捉えるべき春秋優劣論は『万葉集』の額田王の

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源氏物語 9

源氏物語 9

『源氏物語』第34帖からの第二部と括られる巻名のみの『雲隠』までは光源氏の晩年が描かれる重苦しい物語群である。その前半部、光は40の賀を祝され『若菜』上下で、はるかに年少の女三の宮を正室として迎える。理想を具現化させた最愛の紫の上を苦悩させ、朱雀院ばかりでなく紫の上の病や出家志向が物語を暗澹たる雰囲気に染め上げていく。明石女御は後の春宮を出産し、父である明石入道は宿願成就と受けとめ遁世する。女三の

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源氏物語 10

源氏物語 10

『源氏物語』第二部後半の第37帖「横笛」から第41帖「幻」までは、もはや王朝恋愛絵巻という華麗さとは遠くなって心理小説と呼びたくなる展開である。光は50代となり、年若い正室女三の宮の柏木との禁断の子を受け入れ、柏木の死を悼む。わが子夕霧は、かつての自分と同じ過ちの道を進み始め、運命に翻弄された紫の上の苦悩と孤独は深まり、出家を願うも光の許しを得られず悲しみのうちに落命する。光は、かかる現実こそ自ら

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源氏物語 11

源氏物語 11

源氏亡きあとの第3部の「宇治十帖」と愛される子ども世代の物語は、第2部の心理小説風趣きにもまして近現代作品に重なる展開で、誰もが想起する様に、宇治の大君と妹中の君の哀しい顚末は、いつ読んでもジイドの『狭き門』を重ねないではいられない。姉妹の年齢差も人物像も、ここまで相似形となると、グローバルな文学の普遍性ということを感取するばかり。大長編の大団円は、亡き大君の面影を宿す異腹の浮舟と薫のあまりに切な

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源氏物語 12  角田光代訳①

源氏物語 12 角田光代訳①

『源氏物語』2ヶ月にわたる朝読書通読中、何度か谷崎、円地、寂聴三者の訳を読み返し比較参照しながら、2017年秋に上巻が出た角田光代訳も読まなければと思うことが重なり、完結まで購入を控えていた大部の3冊を7月に入って急ぎネット注文し、原文読了後のこの1週間、まずは宇治十帖の下巻から手に取り600頁の大冊を読了した。
原文通読でも記した通り、宇治十帖についてはつねづね近代小説のような印象をもっていて、

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源氏物語 13  角田光代訳②

源氏物語 13 角田光代訳②

角田光代源氏、下巻に続いて、上巻読了。
敬語を省いての訳出は、物語の骨格を鮮明にしてスピード感が出るものの、王朝気分が減じて、特に上巻の「少女」までは光と姫君たちとの行き来が単なる関係性の説明になって、語り手が時に立ち現れるような『源氏物語』の妙味である典雅な調べと縁遠いものになるような印象である。第10帖「賢木」のような錯綜した人間関係の綾が読みどころとなる巻では、角田訳が冴え渡って滲み入るが、

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源氏物語 14  角田光代訳③

源氏物語 14 角田光代訳③

角田光代訳『源氏物語』3巻読了。2ヶ月にわたった原文通読に続けての20日間、充実した朝読書となりました。下巻、上巻読了時にも報告した通り、角田訳の最大の魅力はスピード感。敬語を割愛して原文に響く特有の語りの調べより、物語の骨格を鮮明にした訳出は、なるほど短期間で読了できるもので、これまでの訳にはない訳者が目指した目的が達成されている。また、各巻に付されたこの3巻を含む全集編纂者池澤夏樹の解説も素晴

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源氏物語 番外

源氏物語 番外

原作は『源氏物語』の帖名を組み合わせた筆名であることが知られている現役医師作家箒木蓬生の同名小説。出版当時、山本周五郎賞を受賞し、選考委員だった故井上ひさしの激賞に興味を持って一気読みしたことで、あの抒情は容易には映画化できないだろうな、と公開時敬遠した同作をNetflix配信を機に、意を決して鑑賞。
自ら脚本も担当した平山秀幸監督を始め、主演の3人、とりわけ小松菜奈の健闘は評価するが、原作愛読者

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