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中編小説

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2023年3月の記事一覧

『誰かが、あなたと。』

『誰かが、あなたと。』

「そこ座ってもいいかな」
 春に春を重ねたような声。まばらな木漏れ日がページの上で揺れる。僕は栞をそっと挟んで本を閉じた。まだ、随分とページは残っている。

「あ、そこは座らないでほしいんだ」
「え、どうして?」
 困惑した声も春の趣。彼女は続けてさえずる。

「誰か、来るの?」
「あ、うん。おとうとが来るかもしれないんだ。ほら、そこに仮面ライダーのシールが貼ってあるでしょ。だいぶ剥がれかかってい

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