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【ジェンダーギャップ】若者の流出を止めたいなら、地方の男女格差の解消を

声を形に、新しい日南。

さて、今日はジェンダーギャップ指数について話します。
私は男女格差の解消は、地方にとって必要不可欠だと思っています。今回はその理由や、実際にどのような取り組みをすべきかを、政治参加や経済の観点で考察していきます。


「政治参加」と「経済」が男女格差の原因

最近、世界経済フォーラム(WEF)がまとめた2024年版「ジェンダーギャップ・レポート」が発表されました。
男女平等の達成率を比べる「ジェンダーギャップ指数ランキング」で、日本は146か国中118位
過去最低の順位だった前年の125位からわずかに持ち直しましたが、依然としてひどい順位です。

日本の順位が低いのは毎年のことなので、いまさら感はありますが…。
指数を詳しく見てみると、原因ははっきりしています。
「経済」「教育」「医療へのアクセス」「政治参加」の4分野の評価で、「教育」と「医療」はそんなに悪い数字ではないんです。
問題は「経済」と「政治参加」です。
経済は具体的に、男女の賃金格差
政治参加はまあ、日本の閣僚の顔ぶれを見たらわかりますよね。政治に参加している女性が少なすぎるのが問題です。

女性の社会参加は、GDPを押し上げる


https://www.mckinsey.com/jp/~/media/mckinsey/locations/asia/japan/our%20insights/mobilizing%20women/mobilizing-women-in-japan-to-step-up.pdf

マッキンゼー日本支社のレポートによると、女性の社会参加自体は、単純に女性の権利を守るというだけの話ではなく、個々の企業や経済においても有益です。
このレポートによると、女性の就労率や就労時間が増え、賃金格差が是正されるなどの「ジェンダー・ダイバーシティ」が改善がされた場合、日本の GDPを6%押し上げることになります。
地方はさらに、ジェンダーギャップの改善が進んでいない傾向にあるため、私はさらにGDPの押し上げを期待できると思っています。
経済合理性からいっても、男女の格差解消は間違っていないということです。

議会改革で政治参加を促そう

男女比を反映すると、日南市議会の女性議員は9人?

課題の一つである女性の政治参加を日南市で見ていきましょう。
日南市の市議会議員は現在、18人(定数19人)いますが、そのうち女性は4人です。
一方で、日南市の人口の男女比は、男:女=0.88:1。女性の方が少し多いですね。
男女比をそのまま反映するとしたら、市議会は9人以上が女性議員であってもおかしくないはずです。
まちの課題の中には、実体験した女性だからこそ、気づくことのできる部分が多くあります。例えば、生理の貧困や妊娠、出産での負担増など。
こうした課題にアプローチする際、男性だけの視点だと、どうしても肝心な要素が抜け落ちてしまうのです。議会でも行政でも、女性が声を上げて、活躍できる環境は欠かせません。

議会改革と政治家を養成する場を

では、女性だけを優遇すればいいのか。
私は、そうではなく、市民が性別にかかわらず、平等に活躍できる機会をつくることこそが大事だと考えます。
確かに出産は女性しかできませんが、これからの時代は、育児や家族の介護など、男性もさまざまな事情を抱えながら働くことが考えられます。
性別に関わらず、市民が、自らの経験を生かして政治に参加できる土壌づくりと、議会の効率化が必要だと考えます。

記者時代、市政に市民の意見を反映させる場となる議会の取材は仕事の一部でした。ですが、平日の昼間にやっている議会を傍聴できる市民はあまり多くはないと思います。
だからこそ、市民が議会や行政の仕組み、議員の仕事というものについて、改めて学ぶ場が必要でしょう。
こうした政治や議会を学ぶプログラムを市民向けに実施するのも効果的だと思います。

もう一つはやはり、作業の効率化です。
議会でも、いろいろな会議や事務作業をオンラインでできるようにするなど、女性に限らず、忙しくて優秀な人が効率的に参加できるような場にしていかないといけません。

議会改革については、早稲田大のマニフェスト研究所の議会改革度調査が有名です。2024年版が最近、公表されました。

https://maniken.jp/gikai/2023/2023rank_sougou.pdf

全国約1700自治体のうち、上位300位を公表しているのですが、日南市は残念ながら、入っていません。

宮崎市議会は前回153位でしたが、議会DXを取り入れたこともあり、66位に躍進しました。

1位の登別市議会はどんなことをやっているのか。
「オンライン一般質問」、脱ハンコの完全ペーパーレス化、議会資料の二次元コード化、乳幼児入場・撮影自由化、議場への車椅子傍聴席の設置など。
やれることは全部、やっているという感じですね。

まずは、この議会改革調査で300位以内に入りたいですね。

多様な人が議員になれるようにすべきだ

日南市の前回の市議選では、立候補の届出者数が定数を上回らず、無投票でした。
地域を良くするためには、さまざまな年代、性別、背景の市民たちが多く立ち上がる活発なまちを目指したいものです。

ですが、今働いている仕事の待遇や社会保険の枠組みを抜けて、4年に1度、無職になるかもしれない世界に足を突っ込んでもらうのは現実的に難しい面もあります。
それでも、未来を担う現役世代の人たちが政治に参加したいと思えるような仕組みづくりをしないといけません。
会社員で居続けながら、議員活動ができるように、行政が補助する
など、地域の優秀な人材にもっと、政治参加してもらう流れをつくっていきましょう!
そうした取り組みの先に、女性議員が増えるという未来もあるはずです。

育休取得率の向上は地域経済で至上命題

育休取得率の上昇が課題

政治参加の部分が長くなりましたが、次は「経済」についてです。
簡単に言うと、男女の賃金格差や幹部職員の登用の問題です。

今年のノーベル経済学賞を受賞したのは、米ハーバード大のクラウディア・ゴールディン教授。労働市場における男女格差の原因についての研究が評価されました。

ゴールディン教授は、日本の男性の育児休業の手厚さについて評価する一方で、取得率が低いことを指摘しています。
女性が出産後、仕事に復帰し、活躍できる環境をつくるためには、やはり、男性の育児休業取得をいかに図っていくかが大事になってきます。

厚生労働省は女性が活躍している企業に対して「えるぼし認定」、仕事と家庭の両立を支援している企業を「くるみん認定」を授与しています。

特に、くるみん認定は男性の育児休業取得率についても一定程度の基準を設けています。宮崎県内に認定企業は57社あり、日南市では「ニチワ」と「富岡建設」の2社だけが認定されています。

こうした認定を取得する企業を市として推進していくことが大事です。

強欲な仕事の仕方をなくさないといけない

ゴールディン教授を含む、さまざまな研究者の論文でも指摘されていますが、会社の上層部への女性の進出を阻んでいるのは、急な残業や深夜対応もいとわないような働き方の存在です。

結局、残業や休日出勤、夜間業務や急な呼び出し、顧客と顔を合わせての打ち合わせなどに対応できる人が会社で出世しているケースが多いのです。

ゴールディン教授は、「子供がいる場合、性別役割意識の下、女性がこうした仕事に対応できなくなり、男性との賃金が開いてしまう」と指摘しています。
この状況を打破するには、長時間労働の是正やリモートワークなどの柔軟な働き方の推進、無駄な仕事をデジタル化などで省き、生産性の高い仕事を評価する仕組みが必要になります。

女性がキャリアアップできない地域から女性は離れていく

若者の流出の内訳をみると、男性より女性の流出が多いです。
なので、若者の流出に歯止めをかける上では、いかに女性に地元にとどまってもらえるか、地元に戻ってきてもらえるか、という観点が大事です。

トヨタなど自動車系の大企業が多い愛知県。
働く場所が多くて雇用が安定しており、賃金も高い、そんな愛知県ですら悩んでいるのは女性の東京への流出です。
地元を出ていった女性を対象に調査を実施したところ、彼女たちが愛知を離れた理由が分かってきました。
こういう調査は、地元に住んでいる女性を対象にやりがちなのですが、ちゃんと出ていった女性を対象に実施しているところがミソです。

出ていった女性たちの多くが求めているのは「仕事と育児の両立を支援する企業等の制度や職場環境の整備」「女性が活躍できる環境をつくる」という項目でした。
結局、賃金が高かったとしても、自身が望むようなキャリアアップができないような場所では女性は働きたくないのです。
なので、「地元から若者が流出している」と叫ぶ前にまず、経済的な男女の格差をなくしていくことが大事なのです。

市がやるべきことは全部やる!


慢性的に人がいない状況で、男性の育児休業の取得率などを上げるのは並大抵の苦労ではないと思います。
実際、くるみん認定を取得した企業を記者時代に取材したことがありますが、「本当に大変だった」と口をそろえていました。
大企業の支社などの認定は多いのですが、地場企業でこうした取り組みを全うできるケースは少ないです。
しかし、市としてはこういう取り組みを率先している企業をどんどんバックアップしていくべきです。場合によっては、市独自の認定制度をつくって、くるみん認定などの前の段階で企業を表彰する仕組みをつくってもいいでしょう。
行政自体もそのお手本となっていかなければいけません。
行政自体の育休取得率が低いのであれば、民間企業に推進もできません

また、くるみん認定などに限らず、こうした子育てや女性活躍の取り組みは国も助成している制度があるので、民間企業に紹介していく仕組みも大事になります。
ほかにも、ロールモデルとなる企業を指名したり、市内の企業向けにセミナーを開いたり、まだまだできることはたくさんあります。

経済も政治もつながっている

男女が同じように力を発揮できる社会を整えていく。
それによって、政治や経済の場で男女格差がなくなる。
地方はこれからどんどん、供給制約社会になっていきます。
団塊の世代の方たちがすべて75歳以上を迎える中、働き手をいかに確保できるかが至上命題になっています。
今の時代、男女が平等に働ける環境ができていない地域で働きたいという若者はいないのです。
男女格差を解消し、日本の先進事例となるような新しい日南をみんなでつくっていきましょう!

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