FPS高評価レビュー300件を集めたら「面白さの違い」がわかった【ゲーム×ブランディング】
「ゲームってめちゃめちゃ面白いけど、面白さにもいろいろ種類があるのでは?」
ゲームジャンルには、RPGやシュミレーション、対戦アクション、リズムなどなど、細分化すると多くの種類があります。どのジャンルも面白いですが、その「面白いポイント」は公式サイトを見ても、人から聞いても、タイトルによっても全部違うっぽいです。
でも、ほかと何が違って、どう面白いのか、ちゃんと説明できなくないですか???自分はあまり上手く説明できなくて、「どれも同じに見える」と言われると、思わず唸ってしまいます。
自分はマーケティングやブランディングを支援する会社で働いていて「その商品の良さって、ほかと何が違うの?」みたいなことをいつも考えているので、今回は仕事で使う分析方法を使って、本気で「ほかのゲームと違って面白い」ところを整理してやろうと思います。
今回のお題となるるゲームは、自分が3年間遊び続けているアクションシューティングゲームのOverwatch(Blizzard社)。ほかのゲームとどう違ってどう面白いのか、ソーシャルリスニングという手法で調べてみました。
FPSに求められる一般的な面白さって?
Overwatchは、いわゆるFPS、一人称視点のシューティングゲームです。銃をぶっ放す気持ちよさなどから、ながらく人気のゲームジャンルで、代表作として挙げられるゲームは「コールオブデューティ」などでしょうか。
最初に、FPSというゲームジャンルそのものに求められている「面白さ」をひも解いてみます。なぜなら、「FPSに最低限必要な面白さ」と「そのゲーム特有の面白さ」を分けて考えないと、また「全部一緒じゃん」と言われてしまう可能性があるからです。
(図にするとこんな感じかな…?)
そこでいくつかのFPSゲームタイトルをピックアップし、AmazonやSteam、Twitterなどの高評価レビューを無作為に抽出、タグ分けしました。ピックアップしたタイトルは以下の通りです。
・コールオブデューティ モダン・ウォーフェア
・コールオブデューティ ブラックオプス4
・タイタンフォール2
・バトルフィールド5
・ボーダーランズ3
(タイトル毎にn=20、合計n=100)
レビューをまとめたのが、以下のグラフになります。
やはり、敵を倒したり勝ったりした時の「爽快感(21.0%)」や、グラフィックやサウンドから得られる「臨場感(20.0%)」を面白い!と感じる人が多いようです。次いで、「ストーリー(14.0%)」や「戦略性(10.0%)」が多く評価されています。
これらの要素がFPSのゲームジャンルを支えている面白さだと考えられます。しかし、「爽快感があるから面白い!」とアピールしても、多くのFPSから爽快感を感じられるので、まだ「ほかのFPSと同じじゃん」と一蹴されてしまいます。
次は、Overwatchがこうした最低限必要な要素をおさえながら、個性となる特有の面白さも持っているのか調べてみましょう。
Overwatchは「みんなでプレイ」が楽しいキャラゲー
Overwatchは、数あるFPSの中でも珍しいesportsプロリーグ「The Overwatch League」が開催されていたり
めちゃめちゃかっこいい動画があったり
レゴが発売されていたりするなど、多岐にわたるコンテンツ展開で世界的な人気を誇っているゲームです。
Overwatchの魅力を語るのはここまでにして、Overwatchの面白さ要素を整理してみましょう。上記と同じ手法でレビューをまとめています。(n=100)
オーバーウォッチでは、「パーティプレイが楽しい(30.1%)」の評価が高いです。「FPS初心者でも楽しめる(19.3%)」、「キャラが良い(18.1%)」も多くのユーザーが面白い要素として挙げています。
FPSの前提として求められている爽快感や戦略性への評価もある程度備えている点に注目です。さらに、キャラの良さやパーティプレイの楽しさが引き立っていることで、人気を集めているのでは、と推察できます。
Overwatchの個性となりそうな要素が見えてきましたが、ほかのFPSゲームでも同じような要素を持っているといけないので、ここでひとつOverwatchと同じくらい人気のゲームも調査してみましょう。
レインボーシックスシージは緊張感と戦略に燃える
Overwatchと同じ位熱量が高いユーザーを持っているのが、レインボーシックスシージ(以下:シージ)だと思っています。世界大会が毎年開催されており、「なんでそこ切り抜けられる???」みたいなスーパープレイや、画面越しでも伝わる刹那の緊張感がとってもアツいゲームです。
早速、そのレインボーシックスシージの面白いポイントを見てみましょう。
「戦略性(29.6%)」が最も高く、「緊張感(22.2%)」と「パーティプレイが楽しい(22.2%)」が同率2位。これらの3要素で70%近くの評価になっており、FPSの基本要素のはずだった「爽快感」は、なんと3.7%!この結果は以外でした。
ほかのFPSでは、やられても復活できるシステムがほとんどですが、シージでは、やられたらその試合中は復活できません。ひとり欠けることが仲間に大きな影響をもたらす緊張感。反対に敵を倒すための知識、戦略、スキル、チームワーク。こうした際立った要素が組み合わさった面白さがシージにはあるのだと思います。
やっぱりOverwatchは「多彩なヒーロー」が個性!
この図は、それぞれのゲームの面白さをマッピングしたものです。自分の業界では、POP(Point of Parity:同質化要素)とか、POD(Point of different:差別化要素)といった強みのようななものを調べるために使う手法です。
3つの円が重なっているエリアに位置する要素は、
①FPS全般で最低限必要な面白さ要素
②Overwatchとシージのどちらでも味わえる要素
なので、強みは強みですが、それぞれにしかない”個性”とは言えません。赤枠と緑枠内は、Overwatchとシージでしか味わえない要素なので、こちらが個性です。Overwatchは「キャラ」、シージは「緊張感」が、ゲームの個性と考えられます。
公式サイトを見ると、Overwatchは自らを「チームアクション・シューター」とジャンル表現し、「ヒーロー(キャラ)の豊富さ」を繰り返しアピールしています。個性を理解した素晴らしいアピールだと思います!
Overwatchは、キャラが戦う理由をコミックや動画で語っていたり、LGBTQが公言されているキャラ、言葉を話す動物やロボットといった多様性について考えらさせられる世界設定だったり、乳がんへの寄付につながるコンテンツが世界で14億円の売上になったり…「キャラ」という個性を最大限に活用したゲームになっているのです。
長い道のりでしたが、Overwatchの特徴をおさえた紹介は次にようにまとめられるでしょう。
「オーバーウォッチはFPSなんだけど、魅力的なキャラがたくさんいて、友達とワイワイ遊ぶと楽しいゲーム!」
ゲームとして遊んでも、マーケティング・ブランディングの観点から考察しても面白いゲームなので、皆さんも一緒にOverwatchやりましょう。
サポート以上にお返しできるようにがんばります!