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鷹の爪はこうやって生まれた! 水曜企画 note対談 椎木隆太さん vol.1

さて、ゴールデンウィークをはさんで久しぶりの対談企画です。まだ過去の分をご覧になられてない方はこちらを。



それでは今回は椎木隆太さんとです。

椎木隆太
1991年慶應大学経済学部卒業。
ソニー株式会社入社。翌年よりシンガポール・ベトナムに5年間駐在。1997年帰国。
アニプレックス立ち上げに参加。2001年ソニー退社&DLE起業。2005年FLASHアニメ事業開始。
「鷹の爪」「パンパカパンツ」等のヒットを生み出す。2014年マザーズ上場。東京ガールズコレクション買収。2016年東証1部上場。
2019年CEOを退任し取締役ファウンダー就任。米国プロデューサーズギルド会員。

それでは本編スタートです。



高須さんとあれやこれや考えて前に進まないのも含めて楽しい

鎌田:今回の対談は、放送作家の高須さんのご紹介がきっかけだったわけですが、椎木さんは高須さんとのつながりは何がきっかけだったんですか?

椎木:それはTEDなんです。TEDに参加して誰かのプレゼン聞いてたら、知人に「あー椎木さん、こちら高須さんですー!」って言って紹介されて。
で、高須さんから「鷹の爪のビジネスモデル凄い面白いと思ってました!今度、話聞かせてください」と。で「是非!」となって。

鎌田:そうなんだ!最初にこのnoteで対談させていただいたのは高須さんだったので「誰か紹介してください」って言ったら、最初に椎木さんのお名前が出てきて。

椎木:おお、ありがたいですね。

鎌田:「面白いよー!」と仰ってました。

椎木:はい、一緒に島根旅行行ったりとか。あと、誕生日一緒なんです。

鎌田:えっ!

椎木:12月24日で(笑)

鎌田:その日付で誕生日一緒な人も、なかなかいないですよね。

椎木:すみません(笑)そういうのもあって、なんか相通ずるものがあって、色々、趣味の話とかも話してますねー。最近は、なんちゃって別荘オーナーみたいな?

鎌田:シェアみたいなやつですか?

椎木えーっとね、ただ別荘を「こんなん探してるんですー」「こんなんが見つかったんですー」って情報持ち寄って二人で盛り上がるやつ。

鎌田:(笑笑)

椎木:「まあでも、買うほどじゃないかなあ…」みたいな(笑)「でもやっぱり近場に一つは欲しいよなあ」って。

鎌田:「いいね!いいね!」みたいな!?

椎木:そうそう。で、お互い「へえ、そういうところ買うんだー、住むんだー」「でもねーよく考えると買うまでじゃないよねー」とか言いながらも、結局お互いが「いいっすねー!いいっすねー」って言いながら盛り上がりまくり。

鎌田:ふふふ

椎木:決して前に進んでないっていう(笑)でも、十分。なかなか共有しにくいじゃないですか。腹割ってそこらへんの話できる相手ってあまり僕もいないんで。高須さんとそうやって、家族により幸せになってもらうための場とかあれやこれや考えてます。前に進まないのも含めて楽しいですよね。



鷹の爪が15年、DLEが20年。 鷹の爪がない僕的には暗黒の5年間があったんです


鎌田
:ところで、高須さんが「鷹の爪のビジネスモデルが」って言ってたってお話あったじゃないですか。

椎木:はい

鎌田鷹の爪(アニメコンテンツ「秘密結社 鷹の爪」)って何年になるんですか?

椎木:15年です、今年で。

鎌田:ほおー

椎木ちょうど15年で、DLEが今年で20年。つまり5年間、鷹の爪がない、僕的には暗黒の5年間ってあったんですよ。

鎌田:もともとソニーにいらっしゃって、IPのお仕事されてて。

椎木:はい

鎌田:で、DLE作られて、最初にやったことは何だったんですか?キャラクター作るとかそういうことだったんですか?

椎木最初はマンガ事業からなんです。世界にマンガ文化が日本ほど大きくないって言うのはおかしいと。こんなに凄いIPで、ニッチとはいえアニメは世界中で愛されているわけですので。

鎌田:うん

椎木:同じくらいマンガも世界中に突き刺さってないといけない!っていう課題感が自分にあって。それがなぜ突き刺さってないかというと、週刊マンガ誌っていう、あのフォーマットがないからだと仮設を立てて…

鎌田:なるほど

椎木:コミックや単行本はあっても、読みたいものと読みたくないものが混在してて毎週毎週続きを読むっていう、あの読書習慣が無いから流行らないんだと。
で、じゃあ週刊マンガ雑誌を刊行しようとなって。やるなら世界最大のコンテンツ市場であるアメリカでやろう!って実行に移したのが最初の仕事でした。

鎌田:じゃ、最初からグローバル目線だったんですか?

椎木:そうですね。ソニー入社して海外マーケティングの部隊に配属されて2年目からシンガポール駐在で、2年半いてからベトナム駐在になって、トータルで5年くらいアジアに駐在して。で、帰国してアニプレックスに入ったんです。アニプレックスの立ち上げメンバーですね。

鎌田:ちょっと話それちゃうかもしれないんですけど、アニプレックス立ち上げメンバーだったところから、自分でやりたい理由って何だったんですか?

椎木:僕、ソニーに入る時から、なる早で起業したいと思ってたんですよ。

鎌田:うーーん

椎木:家族にサラリーマンを経験した人がいなくて。母方が全員医者で、父方は全員芸術家一家。僕、静岡県の田舎、ジュビロ磐田の磐田市ってところで生まれ育って。普通のいわゆるサラリーマンと呼ばれる人をあまり見たことなかったんですよね。

鎌田:ふふふ

椎木:で、いろんな人に「サラリーマンなんて地獄だよ!会社の歯車で」みたいなことをずっと洗脳されてて。僕はバブル世代だったので、周りの人たちが「大企業に勤めて悠々自適に一生楽しく暮らす」みたいなこと言っている中で、僕だけ「えー社会人になりたくなーい」と。

鎌田:はい

椎木:でも自分で起業するにはアイデアや熱い野望とかがまだ無かったので、これは一回社会人になるしかないってことで覚悟を決めて…
海外で仕事をやりたいってことは、僕が小さい頃から思っていたので、海外に強い会社で色々経験させてもらおうっていうのが、ソニーに入ったきっかけです。

鎌田:面白い!それで実際、辞められてマンガ立ち上げられて、アメリカで発行するわけじゃないですか。

椎木:はい

鎌田:どうだったんですか?

椎木:これが、すごく面白くてですね…

鎌田:はい

椎木:自分で立ち上げて、作家さんとか大きな企業から出資を受けて、僕が筆頭株主で20%オーナーで社長になって。で、僕、当時サラリーマン辞めていきなりだったんで何も知らなかったんですね。20%保有して社長だったら、無敵だと思ってたんですよ!

鎌田:なるほど!

椎木:筆頭株主だし(笑)

鎌田:(笑)

椎木:僕は成功するために、こういう雑誌フォーマットはどうか、とか、こういう作品は本当にアメリカで受けるのか?とか、考えることや迷っていることがたくさんあったんです。でも、他のパートナー会社から「椎木さん、そのマーケット調査みたいなのはいいから、とっととやろうよ!我々は、これとこれとこれやりたいのよ!」みたいな感じがあって。

鎌田:なるほど、なるほど。

椎木:僕は退職金からなにから人生を全部つぎ込んだ会社なので、絶対失敗できないし慎重にいきたい。片や、大企業からすると数百万とかの投資なんで「チャッチャってやろうよ、一種の遊びみたいなものなんだから」と。

鎌田:はいはいはい

椎木:「失敗したら失敗したでいいじゃない」みたいな。全財産懸けてる僕 vs お小遣い程度のお金を懸けてる感覚の彼ら、というギャップが激しくて。

鎌田:(笑)

椎木:途中で80%所有の僕以外の全員が一致団結して「椎木辞めさせよう!」と。「こいつなんか気に入らない!」みたいなことで、ある日、解任されたんですよ!

鎌田:えっ?!

椎木:発刊を見ずに!

鎌田:発刊を見ずに?!

椎木:はい、見ずに!(笑)それで僕、完全に無職になって。半年前まではソニーで、一番出世で、海外駐在員もハノイの支社長もやらせてもらって、アニプレックス立ち上げメンバーで海外事業の責任者だったんです。肩で風切って自信満々だった日々だったのですが…

鎌田:はい

椎木:色んな人に「俺、絶対ビッグな男になるから。ソニーなんかの器じゃないから」なんて生意気言いながらソニー辞めたのに、半年後に、収入無しの無職になった時の「自分がどれだけ勘違いしていたか?自分の判断は、どれだけ間違ってたのか?」という後悔や恐怖がすごくて。

鎌田:なるほど。

椎木これから暮らしていけるかとかよりも「自惚れが原因で何かとんでもないものを失っちゃったんじゃないか?」っていう恐怖が強かったですね。

鎌田:うーん

椎木:その時、子供2人抱えて起業したので、収入が無い時には、流石に「やべーっ!」って(笑)

鎌田:それ、おいくつの時なんですか?

椎木:34ですね。十分年齢もいってましたし。

鎌田:ほー

椎木:当時は起業の情報も少なく、ロールモデルもそんなにない時代だったので…「一発逆転」がまったく見えなかったですね。

鎌田:うーーん

椎木:エンジニアつかまえて、IT業界で一攫千金狙って!みたいなのがまだない… いや、あったのかもしれないけど、少なくとも、僕の目の前では想像もできなかったことだったので。

鎌田:うんうん

椎木:本当にまっさら、信頼もゼロ、直前までサラリーマンだったからサバイバルのノウハウもゼロの自分が、ぽんっと更地に放り出されて、「ここから逆転できるのかな? 」「サラリーマンでいた方がよかったんじゃないのかな?」「決断間違ってたんじゃないのかな?」「僕って無価値なのかな?」って考えが止まらず怖かったですね、ずっと。


機関銃のように生み出せるところが、フロッグマンさん最高なんだ!

鎌田:それで放り出されて、そこからDLE作るんですか?

椎木:一応、DLEの前身で実質、僕しかいないパサニアっていうのを作っていて、そこから投資してたんです。パサニアの資本金をほぼ全額マンガ事業に投資したみたいな形になって。もう時間も熱量もアイデアも資本金も全て一点に賭けたところで首切られちゃった。投資した資本金は返ってくるアテもなく…結局は一年後くらいには戻ってきたのですが…

鎌田:へーー

椎木:突然放り出されちゃったんで何もないんですよ。貯金も収入もない。子供2人と家内と僕、千代田区の2LDK暮らしで家賃や生活費は立派にあって…

鎌田:で、そこでパサニア残って、お金ないけど、ここからどうしていこう、みたいになるわけじゃないですか?

椎木:はい、そうですね。

鎌田:何をやったんですか?

椎木僕的には本来、そこはやりたくなかったんですけど、アニプレックス時代にやっていた、コンテンツの海外への販売事業ですね。とりあえずそこは、ハリウッドへの人脈があって。
アニプレックスはもともと、ソニーピクチャーズとソニーミュージックの合弁から始まって、ソニーピクチャーズのアニメ部署が独立したって感じになっていたんですね。

鎌田:うんうん

椎木:それで僕、ソニーピクチャーズのアメリカ本社との関係がすごく深くて、ハリウッド人脈とかそこでできたんです。それを持っているのは業界で僕しかいないという自負もあって、そのノウハウは強いなとは思っていたんです。でも一度やり切ったビジネスなので僕は同じことをやりたくないと思ってたんです。その人脈を使っていろんな日本のコンテンツ会社に「ハリウッドに持っていきませんか?」って言ってお仕事をもらうような。

鎌田:業務委託みたいな形ですか

椎木:というか「出入りの業者さん」ですね。「これよろしく!」って言われて、「はい!お借りしまーす!」って世界中の知人に営業かけて「こんな感じで売れましたー!」「ああ、ご苦労さーん」という感じの仕事を、鷹の爪が見つかるまでやってました。

鎌田手数料もらって、生きていくためにやらなくちゃいけない。でも、やりたくはなかったみたいな。

椎木:はい、もう食べるために寝ずに命削ってやった仕事でしたね。貴重な体験でした。

鎌田:そして、鷹の爪が見つかったっておっしゃってましたけど。

椎木:はい。

鎌田:生み出す、生み出さない、見つける、見つけないだと、どれがいちばん正しいんですか?

椎木:それがすごく面白くて。まず、フロッグマンの作品をネットで見て「この人天才じゃん!」って思ったんですよね。この人と一緒にビジネスやるなら成功する!って思って。

鎌田:へーーー

椎木:で、島根在住の彼が大阪のイベントにわざわざ来るっていう噂を聞いたので、そのイベントに行って直接会ってなんとか彼を口説くんだ!って。それが2005年の8月くらいです。

鎌田:はい

椎木「フロッグマンさん、僕と一緒に世界に行きましょう!」みたいなところから口説いたんです。

鎌田:うんうんうん

椎木:その頃、彼が機関銃のようにコンテンツを創っていたんですよ、今のYouTuberのように。昔はアニメっていうと重厚長大というか、アニメ化するまで1年2年かかるの当たり前の中、フラッシュアニメというのが出てきて、考えて数日中にはネットにアップする!みたいなことができ始めた頃なんですよね。

鎌田:なるほど

椎木「このモデルを使って機関銃のようにコンテンツ出すんだ!」と。
しかも、僕のようなアニメに特別興味はないような人でさえ、ランチタイムに会社のPCで「こんなくだらないのが最近あるらしいよー」って周りの仲間を呼んで、みんなでクスクス笑うような。
要するに、超オタク向けアニメではなく、カジュアルなキャラクターアニメーションを、個人クリエーターで連発で仕掛けてアニメを民主化したい!っていうのがあって。今で言う、アニメ業界をディスラプションする!的な意気込みで。

鎌田:うんうん

椎木:で、まさに彼はピッタリなんじゃないかって。で、「フロッグマンさんの作品は凄く面白い。でもなにしろすごいのは、機関銃のように生み出せるところがこれからの時代にマッチしていて最高なんだ!」と伝えたんです。彼的には、彼の面白さは評価する人はいても、量産ができることを評価する人は当時の業界の中でいなかったらしく「初めて言われました!」と。「そこをわかってくれるDLEさんと一緒にお仕事したい」と言ってくれたんです。当時、「スキージャンプ・ペア」とかで、個人クリエイターがもてはやされている時だったし、彼も引く手あまただったんですけど、その中からDLEを選んでくれて。

鎌田:ほおー

椎木:鷹の爪の第一弾を出す時に、僕から「正義VS悪という国境超えても理解され易い対決構造」「作品を見た子供達が必ず言ってくれるような決め台詞」「キャラクター展開ができるようなキャラクター性」というお題を出して、それに対してフロッグマンからアイデアが出てきて「いや、そうじゃないんです!」「じゃあこういうのどうですか?」「うーん…もうちょっとこういう感じになりませんか?」と…
僕のこだわりと彼のクリエイティブをガンガン闘わせてできたのが、鷹の爪なんです。2人で作り上げたもので、フロッグマンだけでも、僕だけでも、鷹の爪はできなかったです。



-以下、対談vol.1(5月19日公開予定)に続く-





最後に。
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