本が読めるまで(8)志賀直哉「或る朝」

 最近、志賀直哉のことしか書いていませんが、今日も志賀です。少しずつ一人の作家の作品を読んでいくということをしていきたいなと思っています。今年いっぱいは志賀直哉になりそうです。

 今日は「或る朝」という短編について。これも知名度はあまり高くないのかなーと思いますが、今まで読んだ志賀の短編のなかでは一番好きです。ちなみに「ちくま日本文学」という筑摩書房から出版されている志賀の文庫では巻頭に置かれた作品です。次が「真鶴」なので五十音順ではないはず……。そういう意味でも、大事な作品と捉えられているのかもしれません。

 やはりこれまで紹介したものと同様にあらすじ的なものが無いです。書こうと思えば書けるけれども、でもあらすじ向きの作品ではない、というか……。志賀の短編って、ストーリーというより風景という感じなんですよね。だからあらすじが書けない。

 内容は笑っちゃうような話(すごく些細な日常の出来事)なんだけど、でもなんかあたたかくてほろっときてしまいました。朝起きられない坊やとそのおばあさんの話です。

 志賀は不思議な作家だなーと思います。いろいろ読んでいくとおもしろいエピソードがたくさん出てくる。気が短かったというようなことも聞きますが、でも芥川龍之介のことを書いた「沓掛にて」を読むととても人を想いやる人のような気がします。会ったことはないですが……。

 〈人は文章に出る〉とかって言いますが、志賀の場合はそうかもしれないですね。無駄なものはないけれど、大事なことは含まれているというような。またまたこれからも志賀直哉を読んでいきます。

 (おわり。だんだん冬になってくるー。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?