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【マンガ感想】『商店街のあゆみ』 (著・panpanya)

panpanya先生の『商店街のあゆみ』を読了したので、感想です。

楽園コミックスで9冊目、『足摺り水族館』を含めると遂に10冊目の作品集。
今作も何の変哲もない日常に少しの非日常を組み込んだような、現実と虚構の境界が曖昧になって溶け合ったようなpanpanyaワールド全開の作品集でした。

相変わらず奇想天外なアイディアだらけでセンス・オブ・ワンダーに溢れていますが、巻を重ねるごとに物語の方向性がさらに多様になっている気がします。
まさかまさかのバトル展開になる『スーパーハウス』とか、まさに新しいpanpanyaワールド。
ここで「やったか?」というバトル物でお決まりの台詞を見ることになろうとは・・・!

(引用:『商店街のあゆみ』 / 白泉社 / panpanya / p.44)

明らかに構造がおかしい友人の家『家の家』、福引で当たった土地になるべく安価でお手軽に家を建てる『たのしい不動産』、確かに存在するはずなのに見つからない土地の秘密『うるう町』など、今回も街や家、建築物全般に対する著者の洞察と偏愛が全開。そこがとても良い。

(引用:『商店街のあゆみ』 / 白泉社 / panpanya / p.11)

ビルの成長を見守る『ビルディング』の"ビルの芽"という発想とか、一体どこまでの観察力と閃きがあれば思い付くのやら。
『たのしい不動産』なんかもそうですが、荒唐無稽なのに何故か「本当にそういう事もあるのかもしれない」という妙なリアリティを感じさせます。

(引用:『商店街のあゆみ』 / 白泉社 / panpanya / p.129)

すっかりシリーズ化した、ノーヒントで現在地を推理していく『ここはどこでしょうの旅』シリーズもたいへんお気に入り。
毎回毎回、違ったアイディアで攻めてくるので面白い。
panpanya先生の頭の中、どれだけのアイディアが詰まっとるんだ・・・

(引用:『商店街のあゆみ』 / 白泉社 / panpanya / p.17)

別方向で作者の偏愛を感じる『正しいおにぎりの開け方』もすごい。
あまねくシール収集を趣味とする作者が、どうすればコンビニおにぎりのシールを綺麗に剥がせるかについて、各コンビニの傾向と対策をレクチャーするという訳の分からない素晴らしいエッセイマンガ。
とにかく作者が"日常"に対して只者ではない視点で向き合っているという事が、強力に伝わってきます。

(引用:『商店街のあゆみ』 / 白泉社 / panpanya / p.89)

そして今作で最も印象に残っているのは、商店街が延伸してきて自宅が飲み込まれてしまったことから始まる標題作『商店街のあゆみ』。
商店街の栄枯盛衰を予想外の視点で描き、どこの街にもある衰退した商店街も、本当のところはもしかして・・・と思わせてくる。
ほんのり哀愁を帯びたラストが何とも言えません。
現実と虚構の境界を曖昧にして、日常に向ける視点をずらして非日常を生み出すpanpanyaワールドの真骨頂でしょう。

(引用:『商店街のあゆみ』 / 白泉社 / panpanya / p.166)

今作も読後に不思議な多幸感に包まれる最高の作品集でした。
今後もどのような新しい視点の物語を見せてくれるのか、とても楽しみです。


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