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【読書感想】『思い出リゾート』(著・嬉野雅道)

エッセイ『思い出リゾート』を読了したので、感想です。

御存知、北海道の人気番組『水曜どうでしょう』の名物ディレクターである”うれしー”こと嬉野雅道先生のエッセイです。
noteでweb連載されていたコーヒーについての話、みうらじゅん論、そして本のタイトルにもなっている”思い出”にまつわる話などを収録し、とても幅広くユニークな視点で語られています。
おまけで『ロケの手応えゼロだった「水曜どうでしょう」の新作はなぜおもしろかったのか』という光文社新書を模した別冊付録も付いてくるのですが、こちらの水曜どうでしょう最新作に対する考察も実に興味深かったです。

とにかく物事の捉え方が独特で「そういう捉え方があるのか・・・」と感心します。そして著者の他作品にも言えることですが、なんとも鷹揚で朗らかな文章で安心して読める感じ。
読者の危機感を煽ったり焦燥感を掻き立てるようなことはなく、さりとて「啓蒙しよう!」とか「あなたの人生の価値を高めます!」というような気負いもない。
良い意味で、毒でも薬でもない。

文章に限らず、多くの人の目に留まりたいのであれば、衝撃的で刺激的な”毒”か、高い意識で何かを啓蒙するような”薬”を目指すのが手っ取り早いものでしょう。特に昨今は”毒”や”薬”が世に溢れ過ぎている感があります。
しかし、著者の文章からはそういう作為を感じない。
あくまで自然体で、毒とも薬とも無縁。
そこが文章に安心感と独特の滋味を生んでいる気がします。

ということで、とても朗らかな気持ちになれる文章に満ちた良いエッセイでした。
水曜どうでしょうのファンはもちろんのこと、そうではない人にも一読をおススメできる逸品です。


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