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【取材後記】「何もない」けど「ゆたか」なまち:嘉麻市での1週間

ショッピングモールがない。
コンビニもほとんどない。
電車がほとんど通ってない。
東京に比べると、あまりにも「ない」ものが多いまち。

でも、このまちは、私にとって「ゆたかさ」を感じられる場所でした。

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私は、4/1~4/7の1週間、福岡県の嘉麻市にいました。

普段は東京で大学生をしている私が嘉麻市に来たのは、「嘉麻市ふるさと納税公式note」というプロジェクトを立ち上げ、ふるさと納税の返礼品事業者さんの取材をするため。

1週間で7つの事業者さんをめぐり、記事を執筆しました。
きっかけは、ソフトバンクのインターンシップ、TURE-TECH。
嘉麻市の課題について考え、議論し、さらに考え抜く1週間でした。

私たちのチームのミッションは「ふるさと納税の寄付金額の増大」。

徹底的に私たちの議論に付き合ってくれ、提案が採択された際には心から感激してくださった市職員さんや、自分がつくっているものや嘉麻市に対する強い思いを語ってくださった事業者さんのことが忘れられず、またこうして足を運ぶことになりました。

市職員さん・事業者さん・地域の皆さんの温かさに触れ、充実した1週間になりました。

嘉麻市のいいところは「ひと」だとよく言われます。
私もこの1週間で、嘉麻市の「ひと」に何度も心を動かされました。
ただ、それだけだと十分に魅力が伝わらない。

なぜなら、「人がいい」という言葉は、あまりにも意味が広すぎるから。
どこにでもある、ありふれたことのように思えてしまいます。

この1週間の締めくくりに、
なぜ、自分が嘉麻市に惹かれるのか、
嘉麻市の「ひと」がいいとは、どういうことか、
言語化してみたいと思います。

***

嘉麻市は、人口3万人程度の、のどかなまちです。
山と、田んぼと、川が広がり、ひとと自然が共存するまちです。
大きなスーパーやコンビニも少ない(ように思います)。

私は、この里山のような場所で、「ゆたかさとは何か」について何度も考えました。

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私が普段暮らしている東京は、「豊か」な街です。

食べ物、服、アクセサリー、本、家具、
お金を出せば、欲しいものは何でもすぐに手に入ります。
でも、私はどうしても東京の生活が好きになれませんでした。

確かに、東京はお金さえあれば何でも手に入ります。
でも、それは「お金がないと何も手に入らない」ことを意味します。

通学時の満員電車、
家賃が高いのに狭い家、
名前すら知らないお隣さん、
歩いても歩いても建物と壁しか見えない生活、

そんな東京の姿に、私は、一抹の寂しさと味気なさを感じていました。

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それに比べて、嘉麻市は、冒頭のように「ない」づくしのまちのように思えます。

嘉麻市で出会った人は、自分の地元を紹介するのに「何もないまち」という言葉をよく使っていました。

でも、私は、ここには東京にはない「ゆたかさ」があると思うのです。

この1週間で、私は7つの事業者さんの取材に行きました。

白木牧場さん、赤崎牧場さん、辻養蜂場さん、EAT-Plusさん、ロケット石鹸さん、山田饅頭本舗さん、辛子明太子専門店おおくぼさん。

どの事業者さんも、自分がつくる商品に強いこだわりを持っていました。

一頭一頭の牛を大切にしたいから、自分が面倒をみられる数の牛しか飼わない。
自分が生産した牛に責任を持ちたいから、自分の名前のブランド牛をつくる。
通常よりも時間をかけて、濃厚なはちみつをつくる。
農地が狭くて作業が大変でも、綺麗な水のために源流近くの山奥で稲作をする。
できるだけ安く質の良い商品を提供するために、ボトルから全部自社で製造する。
明治時代からの伝統の味を変えずに、100年以上守り抜く。
明太子を1つ1つ手作りし、一度も冷凍せずに、新鮮なままお客さんに提供する。

そして、どの事業者さんも、「ひととの関係」をすごく大切にしていました。

たとえば、
白木牧場さんは、取材に伺った全員に、特別牛乳をプレゼントしてくださいました。
EAT-Plusさんは、お米を買ったお客さんに、いつもお土産を渡しています。
ロケット石鹸さんからは、取材に伺った全員が、洗剤をひと袋いただきました。
山田饅頭本舗さんでは、お土産のお菓子を買おうとしたところ「せっかく来ていただいたのでお代は結構です」と言っていただきました。

そこにあったのは、ただお金だけを求める「ビジネス」ではありませんでした。

【サービスの提供者・受領者】の関係を超えた、
ゆるやかな人と人とのつながりが、
まちのあちこちで生まれていました。

「また来てね」
「次はいつ来るの?」
そんな声が飛び交うまち。

売上、生産性、経済効果、
そんな言葉や数字からはこぼれ落ちてしまう「ゆたかさ」が、ここにはあると思うのです。

そして、このまちでの生活が、
私にとってはすごく心地よいものでした。
「何もない」けど「ゆたかな」まち。

私は嘉麻市のそういうところに惹かれたのだと思います。

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さいごに。

私がこうやって嘉麻市に来れたのは、
嘉麻市で生活ができたのは、
色々な事業者さんの温かさに触れられたのは、
取材にご協力いただいた事業者さんと、
何より、このプロジェクトの実現のために動いてくださった嘉麻市職員さんのおかげです。

私を受け入れてくださり、
私が嘉麻市に来るまでに何度も打ち合わせをしてくださり、
事業者さんへの連絡を取り次いでくださり、
お仕事が忙しい中取材に同行してくださり、
休みの日には嘉麻市を案内してくださり、

本当にありがとうございました。

このプロジェクトは、始まったばかり。
発信したい事業者さんや嘉麻市の魅力はまだまだたくさんあります。
これからも、色々な人の力を借りて進んでいきたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。


上記でご紹介した事業者さんへのインタビュー記事はこちらに掲載しております。


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