100年を超える伝統と、新時代での試み【かまびと。#06 山田饅頭本舗・財津仁志さん】
朝10時。シャッターが開くと、中からほんのり焼き菓子のいい匂いが漂ってきます。そして、平日にもかかわらず次から次へと来るお客さん。どのお客さんも、手に「山田饅頭」を持って店から出て行きます。
今回の「かまびと。」でご紹介するのは、山田饅頭本舗の4代目、財津仁志さん。嘉麻市の手土産として大人気の山田饅頭。明治時代から続く伝統を守りながら、和菓子屋としての生き残りのため、新たな時代に向き合う財津さんの姿を取材しました。
1, 嘉麻市定番のお土産は、明治時代から続く伝統の味。
ー山田饅頭本舗さんの看板商品といえば「山田饅頭」ですが、山田饅頭の特徴を教えてください。
山田饅頭は、外側がカステラ生地、あんは白餡に卵の黄身を入れた黄身あんを使っています。
筑豊地域ではカステラの生地を使ったカステラ饅頭というものがよく作られています。長崎に伝来したカステラが、シュガーロードからこの辺りに流れてきたからです。カステラ饅頭は飯塚で広まり、そこで修行した人がこのあたりで自分の店を持ったというのがここの起源です。
ー山田饅頭本舗さんが開業したのはいつ頃だったんですか?
うちは、明治36年創業。今年で119年目になります。僕はここの4代目ですね。
ー山田饅頭に対して財津さんが持っているこだわりを教えてください。
1番のこだわりは、昔からの伝統の味を変えないことですね。材料も、製法も、自分が先代に教わったものから変えていません。保存料も一切入っていません。5日しか日持ちがしないのですが、その分新鮮で美味しい状態でお客さんに食べていただけます。
2, 伝統を守りながら、新しい時代に向き合う
ー財津さんは、和菓子だけではなく様々な新商品も開発していますよね?
自分は昔、洋菓子を学んでいました。それもあって、和菓子と洋菓子をミックスさせた「和洋菓子」というものを作っています。どうしても和菓子は若い人は取り込みづらいので、洋菓子と組み合わせて若い人にも手に取ってもらいやすいようにしています。今は抹茶のチーズケーキを出したりしていますね。それをきっかけにして、和菓子の商品を知ってもらえたらいいなと思っています。
また、県が主導して行っている「KURO SELECTION」というプロジェクトにも参加しました。筑豊地域はもともと炭鉱で栄えた街なので、炭鉱の黒をモチーフにしたお菓子を作って欲しいという依頼があったんです。そこで、自分ではどんなお菓子が出せるか考えて、「黒宝ーこくほうー」というチョコ生地の饅頭や、「和三盆くろころ」という商品を開発して提供しました。
ーもともとこのお店を継ごうと考えていたんですか?
そうですね。先代は祖父だったのですが、小さい頃から祖父がお菓子作りをするところを見ていて「いつか一緒にできたらいいな」と思っていました。ものを作ることや、人に喜んでもらうことは好きだったので、自分に向いているんじゃないかなと思って始めました。
ーそれでも、あえて洋菓子を学んだのはなぜですか?
これから先を考えたときに、和菓子だけでは生き残っていけないと思ったんです。この辺りは、市町村合併をする前は日本で2番目に人口が少ないまちで、いつなくなってしまうかもわからないようなところだったんです。そこで、生き残る術は多い方がいいだろうということで洋菓子を学びました。そんなこんなで、洋菓子の専門学校に行った後、洋菓子もやっている和菓子屋さんに修行に行きました。
3, コロナ禍での逆境、大人気コラボ商品で立ち向かう
ーパンストックさんとコラボして作った「あんバター」が大人気と伺いました。
あんバターは月に1回販売しています。4月分の予約は4月1日から開始したのですが、現時点(4月5日)で予約が埋まってしまいました(苦笑)
パンストックさんは全国的にも有名なパン屋さんなので、これまで全くうちのお店を知らなかったような人にも手に取ってもらえるようになりました。すごく美味しいのでリピーターもたくさんいらっしゃいますね。
ーコラボ商品を作ろうと思ったのはなぜですか?
うちは、コロナ禍で売り上げがすごく落ち込んだんですよ。山田饅頭はお土産物として買われることがすごく多いんです。なので、コロナ禍で親戚の集まりなどが減って、売り上げがガタ落ちしてしまったんです。うちは飲食店じゃないので補助金をもらうことはできません。だから自分でなんとかするしかない。
そこで、生き残りの方法を模索するために「コロナ禍でも売れているものはなんだろう」と市場調査をしたんです。そしたら、パンがすごく売れていたんですよね。パンは日常的に消費するものだし、外に出られないから少しでも家でいいものを食べようと考える人が多くて、価格が高いものでも売れているということがわかったんです。
そして、うちでも「あんクロワッサン」を出してみたところ、すごくお客さんの反応が良かったんです。そこで、もっとお客さんを引き込みたいなと思って、有名店であるパンストックさんとコラボさせていただくことになりました。
うちにいらっしゃるお客さんは40代以上の方が多いのですが、あんバターを売っている時は若い方もたくさん来られますね。「一緒に買ったおまんじゅうが美味しかったから」と言って、また来てくださる方もいらっしゃいました。
4, 地域の人がいるから、続けていける。嘉麻市への思いと地域への恩返し
ー嘉麻市や山田地区への思いを聞かせてください!
観光施設や大通りもないのにこんなにお客さんが来てくれていて、「山田饅頭」という1つの商品を柱にして事業を進めていけているというのは、地域の方々がすごく応援してくれているからだと思っています。地域の方々1人1人が山田饅頭を他の人にお勧めしてくれたり手土産にしてくれたりするおかげで、うちに新しく来てくださる方もいらっしゃいます。
嘉麻市の発展なくしてうちが大きくなることはないと思っているので、どうやったら嘉麻市や山田地区がもっと盛り上がっていくんだろう、ということは常々考えていますね。
なので、地域のイベントに参加することもありますし、1年に1回はうちの創業祭「やままん祭り」を開いています。そうすることで地域の人たちに喜んでもらいたいなと思っています。
ー課題がある中でも、それを試行錯誤しながら乗り越えていこうとする財津さんの姿勢や、地域に対する思いに感動しました。ありがとうございました!
そしてこの後、山田饅頭本舗さんのお菓子を買って帰ろうとしたら「せっかく来ていただいたのでお代は結構です」と言ってくださったのでした...泣 あまりの優しさに感動した編集部一同でした🥲
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ここまで読んでくださりありがとうございました!
▷山田饅頭本舗さんの公式ホームページはこちら👇
オンラインストアにもこちらからアクセスできます。
▷山田饅頭本舗さんの公式SNSはこちら👇
「あんバター」の予約告知もここで行っています
▷山田饅頭本舗さんも参加している「KURO SELECTION」についてはこちら👇
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