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【軽羹読書録】東京百景

ご機嫌よう。kalkanです。

東京は今日、最高気温が31度くらいだったのですが、いや〜31度って涼しいですね。太陽が出てなかったからかもしれないけれど、36度とか37度に慣れた体からしたらだいぶ楽…。

とか言って気を抜いていると熱中症になるので気をつけないとですね。私、どうにも体温調節が下手くそで、すぐ熱中症になるんですよね…。気をつけよう…。

そんな本日は、又吉直樹氏の「東京百景」を読了いたしましたので、感想を綴らせていただきたいと思います。

お付き合いいただければ幸いです。

死にたくなるほど苦しい夜には、これは次に楽しいことがある時までの
フリなのだと信じるようにしている。のどが渇いてる時の方が、水は美味い。
忙しい時の方が、休日が嬉しい。苦しい人生の方が、たとえ一瞬だとしても、
誰よりも重みのある幸福を感受できると信じている。
その瞬間が来るのは明日かもしれないし、死ぬ間際かもしれない。
その瞬間を逃さないために生きようと思う

食わず嫌いしていた。又吉直樹という人間を。

私は、そういうところがある。いつもそうだ。村上春樹のときもそうだった。「なんかミーハーだと思われたくないんだよなあ。」という"自意識"が、読むことに抑制をかけていた。

それと同じで、又吉氏のことも避けていた。

『火花』が芥川賞を受賞したあと、「文人」としてテレビに出るようになって、なんだかモヤモヤしていた。だから触れてこなかった。読まなかった。

ふとしたタイミングだった。

ある日、たまたまyoutubeで氏が太宰について語っている動画が上がってきた。桜桃忌の2日前だった。

的確に選ばれた言葉たち、それを紡ぐリズム、テンポ。ぐっと引き込まれてしまった。

それから、氏のyoutubeチャンネルを登録し、毎日繰り返し「インスタントフィクション」を見るようになったのは言うまでもない。

と、ここまで来て、それでもわたしの自意識が邪魔をする。

「いや、ゆーて芸人よ。ちょっと賞取ったからって、ねぇ?」

馬鹿にしすぎである。

私は、どの目線からものを言ってるのか。そう思っていた数週間前の自分をビンタしたい。

だけどある時「東京百景」の存在を知った。

最初に浮かんだのは、太宰の「東京八景」。
なんだかビビッとして、読み始めた。


話は飛んで、氏の動画で「文章はテンポ、リズムである」と言っていたことに、とても共感をした記憶がある。

共感したというか『納得した』に近い。『腑に落ちた』かもしれない。

今まで、私が好きになる作家の特徴は「美しい言葉を紡ぐ人」だと思っていたけれど、それは合っているようで合っていなかった。

「心地よいリズム感のある文章を書く人」

これが正解だった。

何も言わなくても理解し合えるような、ずっと無言でも気まずくならないような、そんな同じ「空気感」や「時間の感じ方」をするような、そんな文章を書ける人に惹かれるんだ。

そして氏は正しくその「心地よいリズム感のある文章を書く人」だった。

エッセイの中身も素晴らしい。
氏の為人にちょっとでも触れられて幸せだった。

だけど何よりも、文章のリズムが素敵だった。

これでもう、私の"自意識"は邪魔をしなくなった。
ほらね、結局そうなのよ。食わず嫌いなのよ。食べたら食べたで好きになる。なんなら大好物になる。

何千冊という書物を読んで、その中で主人公たちと共に生き、出てくる女性とは(妄想だとしても)恋愛をしてきた。

その経験があるからこそ書ける文章だなと。
才能の一言で済ませてはならない。

氏にとってそれは努力ではなかったのかもしれないけれど、そんな経験と努力があるからこそ、芥川賞を受賞したのだろう。


本についての描写なんてほとんどないのに、何故かもっともっと本が読みたくなるエッセイでした。

私みたいに自意識が邪魔している方にこそおすすめです。

それでは本日はここまで。
お付き合い頂きありがとうございます。
kalkanでした!

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