![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45814098/rectangle_large_type_2_11fae0fcafcdb2edf199e82a24be2b2f.png?width=1200)
だから私は、香港を愛す。
普段、あまり映画を見ません。
どんなに面白くても、1時間を過ぎた辺りから、段々飽きてくるんです。
早く終わらないかな〜って。
(共感出来る人、いません?笑)
何でかな、本だと大丈夫なのに。
矢張り私は、活字の世界の人間なのかもしれません。
そんな私でも、「好きな映画」として挙げている作品が幾つかあります。
その一つが、王家衛(ウォンカーウァイ)監督作品。
香港の映画監督で、主に1990年代から2000年代に、多く作品を残しています。
特に好きな作品の1つが、「天使の涙」。
原題は、「堕落天使」。
我らが日本を代表する俳優である、金城武さんも、出演しています。
作品が世に出されたのは、1995年。
(日本では、1996年に上映。)
映画の舞台となっているのも同時期で、まだ中国返還前のイギリス香港だった頃。
ちょうど私が生まれた時期にもあたります。
そして、肝心のストーリーはと言うと、この映画、きっちりとしたあらすじがありません。
所謂「起承転結」が無いのです。
台本にも細かいセリフは無い中で、撮影が進められたそうです。
王家衛監督作品では、割と他の作品もこんな感じ。
明るいネオンサインと雑居ビル。
中国本土からの移民と西洋の民。
"香港"という街にしかない独特のコントラストの中、希望と絶望を持って生きる男女が、流れるように描かれます。
細かいセリフが決められていないからか、言葉数も少なめ。
1990年代の香港という先行き不安定な空気感の中、自分達が何処へ行くのか分からないままに、
刹那を生きる姿。
登場人物は皆、派手なネオンサインと雑居ビルに溶け込んで、儚くも美しい。
そしてラストシーンが、ミシェル・リーというヒロインの女優さんが、金城武にバイクで送ってもらうシーンなのですが、その時のミシェルのセリフがとても印象的。
"帰る時、彼に送ってと頼んだの
初めて人と こんなに近く
すぐに着いて別れるのは分かってたけど
今のこの暖かさは永遠だった”
そしてカメラは、明け方の香港の空へ。
"今のこの暖かさは永遠だったー。"
心の暖かさを、こんなにダイレクトに表現した言葉があるだろうか。
「あぁ人は、こんな瞬間を感じる為に、生きているんだ。」
私には、そう思えてなりませんでした。
人は皆、多かれ少なかれ、絶望と希望を持って生きていると思うのです。
今絶望を感じていたとしても、ふとした言動から次の瞬間、希望を感じていたり。
その連綿と続く刹那こそが、人間であり、人生なのだと。
香港という街を考えた時、私はどうも、
国や地域ではなく、「人間」を見ているような気持ちになります。
それは香港に、人間の絶望と希望、良い面と悪い面、明るい部分と暗い部分、その両端が、隣り合わせで組み込まれているからなのでしょう。
この映画は、殺し屋が出て来るなど、およそ普通に共感が出来るような内容ではないのですが、なぜだか自分ごとのような切なさが感じられるのは、香港にそうした人間味が写し出されているからだと思います。
いつかの海外旅行中、上海か何処かの空港で見た案内板。
「international & Hong Kong」
コロナで忘れ去られがちですが、香港は常に、
自分達のアイデンティティや帰属意識と闘っています。
私の文章など何の救いにもなりませんが、こうして島国から大陸の端っこに想いを馳せている事が、香港で生きる人々の心に届いてくれたらいいな、なんて。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?