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公務員への未練


大学生の頃、サークルの先輩か誰かの紹介で、
社会人の先輩と共に、食事に行く事になった。

国家公務員をされている女性の方で、
確か、裁判所事務官であったと思う。

職業名から連想される堅苦しい雰囲気はなく、
小柄で可愛らしい風貌の女性だった。
それでも職業柄、服装には品行方正が求められるのか、もしくは単に働いて1~2年目の新人だからか、就活生に近いような、黒のスーツに低いヒールの黒パンプスという出で立ちであった。

公務員になろうかと、というよりなるべきかと、
人生において何度か考えた事がある。

1度目は、高校を卒業した春の事だった。

大学受験の事で色々相談に乗って下さった、
中学時代にお世話になった塾の先生に、
大学に合格した事を報告しに行った。

「おめでとう」という言葉の傍ら、
何もやりたい事がなく大学に進学する私に、
「公務員になって嫁に行け」と、
吐き捨てるように言った。

2度目は、大学で教員免許を取得しようと考えた時。
あって困るものではないだろうと思い、
大学2年生の頃、高校の公民の教員免許を取得する為、他の人より余計に単位を取り始めた。
経済学部だったのに、政治学の授業も文学の授業も、専攻科目より優秀な成績を修めた。
ただ、その他の、教員のノウハウを教える必修科目については、自分の中に義務感を醸成しながら、必死に朝一で通学した。

3度目は、周りの友達が公務員を目指し始めた時。
大学で、同じゼミに所属したメンバーは、私を含めて7人。
うち3名が公務員志望で、大学3年生頃から、
大学内で行われる公務員講座に通っていた。
ゼミの合間の雑談時も、公務員試験に関して、よく話題にあがった。
私を含めた他の4名のうち、2名は金融機関、1名は大学院進学、残る1名、つまり私だけが、国立大学生に用意されたレールから、外れるような就活を始めた。

結局、公務員にはならずに26歳を迎えたが、
公務員の友人に会うと、
「私が公務員になっていたら、どうであっただろうか」と、考える時がある。

自分の中に、安定志向で受け身の自分と、
自由のない職場では生きられない自分が共存しているから、何とはなしに、公務員に未練を抱くのだ。

公務員の方々、特に国家公務員の方々は、
7/1に異動が結構あるという事を、今日初めて知った。

誰かが異動して空いたポストに、
私が就く日が来るだろうか。

いや、来ない。

公務員で空きのあるポストの中に、
私が入れる隙間はもうない。

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