見出し画像

2年目の日向夏

蒸留する度にわかることがある。
言い換えれば回を重ねないとわからない事だらけだ。

なんとか晴れている間に日向夏の皮75Kgの蒸留を終了することが出来た。
仕込みに3日蒸留に2日。

今回はそれなりにまとまった量があったので色々な実験が出来てそれなりの失敗もした。精油の蒸留は量を増やさないと絶対に開けられない扉がある。
これは私の森の先生がいつもいう『量も質の要素の一つ』という言葉なのですが、製造元となったときに実感したことです。

そんなこんなの日向夏2年目の結果は2回目としては先ず先ずな気がする。
欲しい香りを作れた。
なんというかあのティンカーベルがティンティンと音を立てて上空で光る粉を撒き散らしながら飛んでるような感じの香りになりそうだ。

柑橘の精油を求める人はその書の個性を持ちつつ大半はその高いトーンの香りを求めているように感じる。なので煮詰めたジャムみたいな甘い柑橘の香りを作ってしまったらその年はもう終了。そして、それを購入したお客様がいたとしたらよほどのことがない限り次の年はもう購入してくれないと思った方がいい気がする。

売れなければ誰も助からないし、誰も喜ばない。
生業としてする以上、喜ぶ人や助かる人が居なければ成り立つものではありません。

作業の効率化を図りこうやって10kgづつの袋に小分けしています。

回を重ねると言うことと経営


花でも実でも、(細かく言えば実は常緑の葉でも!)蒸留の機会は一年に一度しかなく、とにかく機会を逃さないように回数を重ねてつべこべ言わずに自分の蒸留所に合った蒸留方法を見つけて行くしかないわけです。

しかしながら、植物の収穫期というものは地方ごとに一度にやって来るものなので(特にここは農業大国宮崎ですから)どの植物にフォーカスをして選別するのかはとても重要なところになります。
アレもやりたい!これもやりたい!と目移りする自分の心を制するのもとても重要です。

経済用語に機会の損失という言葉がありますが蒸留所オーナー兼蒸留家としては経済的な目星の当たりの付けつつの諸々の決断となることは言うまでもないでしょう。
特に私のところは薪火での蒸留なので薪の木の種類も火加減の調整にとても重要な要素になってきます。そして薪火用の薪の値段なども含めた学校などではおそらく習うことが出来ない類の種類のものもあります。
これら全てのことを包括して『自分の理想通りの香り』を組み上げて行きます。

竈門に火をつけるのも通常マッチ一本でできるのにいつまでやっても火が点かない日もあります。

蒸留所はただ『蒸留する人』ではなく『蒸留したい香りを設計してそれを作る人』のいるところです。
ただ闇雲に植物を蒸留しているだけでは蒸留所としては劣等生です。
蒸留所は『生産者とともに稼働する製造業者』ですから、蒸留したものがはけていかないといけません。その為には品質が良いことは元より色々な要因が必要となるのです。このことも今回の日向夏の蒸留でも痛感した部分でした。

今日は一日だけお休みして明日から次は文旦ネロリの仕込み。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?