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日本在住日記#1 文化祭のこと

こんにちはベルです。今日は僕が日本の高校に通っていた頃の話をしたいと思います。

日本の高校には文化祭と呼ばれる行事がある。祖国でいうところのBravo Educational Festivals(通称BEFs)にあたるイベントで、各クラス劇や動画、屋台、展示等を行う。
そこで僕のクラスは劇でアラジンを演じることになった。

主役のアラジンは…僕だ。外国人だからという理由だけで主役を押し付けられた。別に主役が嫌ではなかったが、「ベル!お前アラブ系のハーフやから、呪文とか使えるやろ」と期待されたのは完全な過大評価だ。呪文など知らない。
きっとそいつはスイス人が全員医者で、タイ人の交通手段がゾウしかなくて、オオサカ人は四六時中タコ焼きを焼いていると思い込んでる。

そんなこんなで始まった文化祭準備はかなり楽しかった。とりわけ印象的なエピソードは「ヘビ創り」だ。
アラジンのラストシーンで敵キャラであるジャファーが恐ろしい大蛇に変身してアラジン達を追い詰めるシーンがある。その大蛇を作ることになった。
ラストシーンであるのでとりわけ手の込んだヘビを創ろうとクラスは盛り上がっていた。
まず学校付近の店を回ってダンボールをかき集めた。そこで家電量販店でもらった冷蔵庫を入れる用のダンボールをヘビの胴体に使うことにした。冷蔵庫用だけあってそれは教室の扉がギリギリ通るくらいの大きなダンボールだ。恐ろしい大蛇を演出するためにはこのくらいの大きさが必要なのだ。
あまりに大きくなるので、胴体、頭、尻尾をそれぞれバラバラに作り本番の直前に組み立てることにした。
リハーサル当日の2時間前に教室の中へそれらを運び入れ、組立作業が始まった。クラスの約半分である20人程度で組み立てる。彼らの働きぶりは凄まじく、作業効率といい、まるで「職人」のようだった。日本の学生の賢さと器用さには驚いた。
ただでさえ巨大な冷蔵庫の胴体に頭と尾がくっついた大蛇は天井スレスレで圧倒的な大迫力だった。本当にヘビに睨まれているような不気味さを纏っていて恐怖を感じさせるようなものだった。母に大蛇の写真を送ったところ、「ブラボー!!!ジャパンのショクニンはスゴイ!!」と大絶賛。
完成したとき、もちろんクラスは祭のように大盛りあがりだ。他のどのクラスをも凌駕する圧倒的なクオリティの劇を完成させられるぞと意気込み、クラスの士気は最高潮に高まっていた。
自分が主役の劇がここまでスゴイものになるものと思わず、涙がでそうなくらい感動した。ありがとうみんな。劇を絶対に成功させよう。
クラスはまさに一つになった。
日本の高校生は仲間想いで情熱的で、とてもスマートだ。

さてここで、巨大な大蛇をどうやって教室の外に持ち出すか、という問題が残った。
やっぱりアホだ。誰一人気が付かなかったのだ。




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