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『POPEYE』を読む

『POPEYE』2016年8月号 (マガジンハウス)
特集「夏の旅は冒険を、そして弁当を」

今回は男子憧れの雑誌『POPEYE』を紹介します。

もう、表紙からオシャレ感が漂いワクワクさせてくれます。
けど、イカめし。都会派だってイカめし表紙にするという、スニーカーだけど素足、のような「ハズし」がまた憧れますね。

そして表紙左にはさりげなく(BENTO&TRIP)と、さすがポパイ、横文字を入れることを忘れません。

旅ガイドの特集ということで、誌面はファッションを抑えめに、旅の行き当たりバッタリ感と素朴感を全面に押し出して、写真のキャプションと合わせて、落書き風のコメントで旅の楽しさを演出してます。

例えば函館。
北海道を函館から根室まで、三日間かけ鉄道で横断して各駅で駅弁を食べる旅の「体」という羨ましい企画です。

“新幹線が開通して勢いのある函館を味わう。”

なるほど新幹線が通過すると勢いが生まれるようですね。
森駅では「いかめし」の写真に

“輝いてみえた”、
“ブレない安定感”、

そして
“ダイオウイカの横に置いてみたい”

と旅のテンションの上がりっぷりを感じさせるナンセンスなコメントが秀逸です。

スケジュールは函館で1日、移動で1日、根室で1日と、函館と根室で二日を満喫。さすがPOEYE、アーバンなトリップはしっかり押さえます。厚岸では「かきめし」に舌鼓を打ち、車窓の北国らしい海のスナップに

“スモーキーな海”

と手書きコメント。

僕のような田舎者はついつい
「ガスってる」と言ってしまうところを「スモーキー」とは、なかなか書けませんね。
二都市間を移動の一日で、駅弁10食という北海道ならではのワイルドな北海道鉄道旅行に憧れます。

 またタイ、バンコクでは

“アツいと聞いて確かめに。ニュー・スクールなバンコクリポート”

と題して、これもまたちょっぴり荒々しさ漂う旅の雰囲気です。
ニュースクールとはオールド・スクールの対の言葉かと思って調べてみたら、1990年代に登場したヒップホップの言葉だったのですね。勉強不足でした恥ずかしい。

ここで写真の手書き文字は俄然勢いを増します。
タイ映画『ブンミおじさんの森』の落書きを堂々と書きこみ、わかる人にはわかるタイカルチャーをチョイス。
またバンコクのギャラリー「BANGKOK City City Gallery」の紹介記事が秀逸だったので引用しますね。

“シティという言葉にはめっぽう弱い僕らのためにあるようなネーミングのこのギャラリーは、バンコクをはじめ世界中のコンテンポラリーアートを紹介すべく昨年オープンした新進気鋭。この手のオルタナティブなホワイトキューブはバンコクにはまだここくらいなのでぜひ覗いてみよう。取材でお邪魔したときは、世界的にも評価の高いタイのヤングなアーティスト、コラクリット・アルナノンチャイ(どことなくラッパーのKOHHっぽい顔立ち!)のだいぶメッセージ性の強い個展が開催されていた”

どうですか?気になりますよね。
なるほど、ニュースクールという言葉はラッパーのKOHHにかかってるわけなんです。凄いですね。
ヤングなタイのアーティストがKOHHに似てることも重要だけど、メッセージ性の内容を知りたくなるのは僕だけかもしれません。これはタイに行くしかないですね。こういうところがマガジンハウスは上手いですね。

写真には

“Banksy参上”

と書き込み、アートといえばバンクシーをきっちりフォロー。もちろん記事にバンクシーは一言も出てきませんが、この最先端のアートシーンを補足するあたりに「そうでなくちゃ」というPOPEYE読者のうなずき声が聞こえてきそうです。

福井では

“地からし、こんにゃく、ところてん。ジブリに出てきそうな店、見っけ!”

と福井とジブリをオーバーラップさせるところなど、行きたくてウズウズしてきます。
勉強不足でしたが、こんにゃくやところてんが出てきたジブリ映画は観たことありませんでした。福井に行く際には是非ともチェックしておきたいと思いました。

そして高知では仁淀川でカヤックです!

“どこまでもブルー。清流仁淀川でカヤックデビュー”
“夢のアラスカではなく、目指したのは高知県。”

と、アラスカには及ばないけど、とりあえず美しい仁淀川でまずはカヤックデビューです。そうです何事も手順は大切ですね。

いつのまにか手書きのコメントはなくなり、誌面からは旅慣れた落ち着きが漂ってくるようです。

“透明な水の色を青に決めた人は、この渓谷を見たんだろうなぁ”

“歩いた先にはドラゴンがいて、戦いに疲れた後に温泉が待つ”

“山、空、岩、たまにビスケット。スライドする風景にRide on!”

など、コメントもどこか詩的です。

このハイクオリティな『POPEYE』の誌面作りは、都会男子を夢見る僕たちのあこがれの雑誌です。
今年で創刊40年となる理由、それはどうやらこのブレない誌面にあるようです。

最後までお読みいただきありがとうございました。 投げ銭でご支援いただけましたらとても幸せになれそうです。