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「原作に忠実ではない」は失敗ではない/『映画原作派のためのアダプテーション入門』

『映画原作派のためのアダプテーション入門』
は映画と“原作”小説の誤解を解く。“原作派”は忠実な映画化を気にするが「翻訳(トランスレート)」と「翻案(アダプテーション)」の違いを理解しないと「原作に忠実ではない=失敗」という評価に拘泥してしまう。作り手も原作再現に囚われてないか。

クライマックスはピンチョンの『LAヴァイス』の映画化『インヒアレント・ヴァイス』について。
ユリイカのポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)の特集からの引用もあって本棚からユリイカ引っ張り出して並行読み。
松田青子さんの「ソルティレージュの声とチョコバナナ」からの引用が多い。

なかでもPTAの解説が面白い。小説から脚本への圧縮の巧さと、小説を熟読した観客に対しても既知のものを未知と錯覚するジャメブ効果を駆使する高度なアダプテーションのテクニックを駆使しているという。やっぱりPTA天才か。

映画原作派のためのアダプテーション入門 
フィッツジェラルドからピンチョンまで
波戸岡景太/著
彩流社 1,980円
ISBN 978-4-7791-7099-7

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