サブストーリー重ねすぎ /【感想】『ＡＩ崩壊』
天才科学者大沢たかおが亡き妻の松嶋菜々子と開発した医療AI「のぞみ」は、2030年にはなくてはならない社会インフラになったという近未来。
大沢たかおの義弟が代表を務める「のぞみ」の管理運営会社が千葉にデータセンターを開設。セレモニーには開発者である大沢たかおも出席する。そこには若くして管理官に上り詰めた警察庁の天才捜査官岩田剛典の姿も。しかし「のぞみ」は突如暴走、ＡＩによって人々は生きる価値がある人間と無い人間に選別されＡＩによって殺されていく。データセンターの主任天才プログラマー黒田大輔もお手上げ状態。しかもテロ対策も万全な「のぞみ」のある（というのもおかしなものだけど）メインルームには大沢たかおの娘が閉じ込められ（なぜか娘を置いて先に出かけてしまった大沢たかお）、外部からハッキングされてるとして警察が捜査するとハッキング元が大沢たかおと特定。一転して容疑者として警察に追われる身になった大沢たかお。そのスキャンダルに群がるＭＥＧＵＭＩたちマスコミ、果たして大沢たかおは自らの疑いを晴らし、無事娘を救うことができるのか？！（雑なストーリー解説）
天才多すぎです。
そして困ったもんです。
どこから話したらいいですかね？とりあえず大沢たかお主演アクション映画の『ミッドナイトイーグル』という映画の話でもしますか。監督脚本は違えど共通する病巣は同じで、メインの物語に変な余計なサイドストーリーを入れちゃって関係ない登場人物を無駄に増やし物語がとっちらかってしまっていることと、両方に大沢たかおが出ているってことです。
ＡＩの暴走と社会混乱、これがまず一つ目のメインストーリー
二つ目に大沢たかおの逃亡劇、三つ目が窮地の娘、四つ目が警察庁のＡＩ開発、５つ目が三浦友和と広瀬アリスのバディ捜査もの、６つ目に大沢たかおと松島菜々子、娘との家族の話、７つ目にＭＥＧＵＭＩたちマスコミやメディアの加熱ぶり、８つ目にＡＩ反対運動、現代の「ラッダイト運動」。
サブストーリー重ねすぎです。
邦画の中ではビッグバジェットに入る本作なので、キャストの多さが先に分かってから脚本を当て書きしたのか、それとも脚本が始めから壮大だったのかわかりませんが、サブストーリーそれぞれが本当に必要かどうか考えると、追われる大沢たかおと追う警察の話だけでよかった気がします。ほかは舞台設定を補強する描き方のみでいいと思うんですが。
娘が大事な家族の写真を落としてしまうところから事件が動き出すんですが、大事な写真なら落とす可能性の最も高いリュックの外のポケットに突っ込むのをみてツッコミたくなりますし、いきなり「あれ、ない、ない」と言って勝手に探しに行ってしまうところに「ほらいわんこっちゃない！ほんとにもうこの子ったら何度言っても聞かないんだから！」とイラついたのは僕だけではないはず。
結局「のぞみ」のメインルームで写真をみつけるものの、そこで「のぞみ」が暴走して閉じ込められてしまう娘。ＡＩ「のぞみ」の声が松嶋菜々子の声なので、てっきり実は大沢たかおは松嶋菜々子の脳をそのまま無理やりＡＩに利用し、菜々子ＡＩのぞみは大沢たかおへの復讐のために実の娘を大沢たかおから引き離したという話だったらいいなあと思うも、そういう展開にもならずに暴走の黒幕はほかにいたという。
面白おかしく語ることも難しい困った映画でした。
入江悠監督は『SRサイタマのラッパー』とか『ビジランテ』のような心をエグってくる作品を送り出す素晴らしい監督なので、本作は多分にいろいろ大変だったのだろうなということで感想を終えます。
ありがとうございました。
鑑賞日：2020年1月31日
「22年目の告白 私が殺人犯です」の入江悠監督が自身のオリジナル脚本で、AIを題材に描いた近未来サスペンス。2030年、天才科学者の桐生浩介が亡き妻のために開発した医療AI「のぞみ」は、年齢、年収、家族構成、病歴、犯罪歴といった全国民の個人情報と健康を管理していた。いまや社会インフラとして欠かせない存在となった「のぞみ」だったが、ある時突然、暴走を開始。AIが生きる価値のない人間を選別して殺戮するという、恐るべき事態が巻き起こる。警察庁の天才捜査官・桜庭は、AIを暴走させたのは開発者である桐生と断定。身に覚えのない桐生は逃亡を開始する。桐生は「のぞみ」を管理するHOPE社の代表で、義弟でもある西村悟とひそかに連絡を取りながら、なんとか事態の収拾を目指すが……。大沢たかおが主人公・桐生を演じるほか、賀来賢人、広瀬アリス、岩田剛典、松嶋菜々子、三浦友和らが共演する。
公開日：2020年1月31日
2020年製作／131分／G／日本
配給：ワーナー・ブラザース映画
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