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書評とかレビューとか

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2019年8月の記事一覧

『商業空間は何の夢を見たか 1960-2000年代の都市と建築』

 僕のような地方民にとってパルコの時代については語る言葉を持ってはいないが、都市設計の官の発想が面白い。  国、自治体のコミュニティを重視した都市設計では、人々は“広場・市庁舎・公会堂・教会”に集まり、流れ、広まっていく、“都市の核”という中世の考えがあるという。されど人々は公共施設には集まらず、実際に集まったのは商業施設だった―という解説に、なんとも地元の公共施設を思い浮かべてしまってニヤリとする。    しかし若い人を中心に消費欲求という意識自体が見直されてきている現在は

『世界を変える日に』

16歳の少女ジェシーの一人語りでなかなか辛い読書だった。  妊娠すると母親が死んでしまう感染症に全人類の女性が感染した近未来。子どもが生まれなくなった世界で主人公ジェシーは人類最後の世代。 16歳という自ら考え行動できるという自信を持ったときに、行動するなら何かの役に立ちたい、地球環境や人類を救いたいと思う。そんな究極の正論に頭が一杯になるときは誰にでもある。ただその夢は大人になるにつれて醒めていく。しかしこの小説世界では醒めるまでの時間を与えてくれない。人類絶滅の危機をジ